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社説・コラム

『ひと・とき』 映画監督 油谷誠至さん

リアル貫き戦後描く

 「戦争を題材にした映画づくりは、自分のテーマだと思ってきた」。公開中の「飛べ!ダコタ」でやっと結実した。「素直に、半端なくやりたかった」。真っすぐに胸を打つ。

 五社英雄監督ら「日本映画の職人」の下で助監督を務め、昼間のテレビドラマで脚光を浴びた。映画監督としてはデビュー作。終戦直後の新潟県佐渡島に英軍の要人機「ダコタ」が不時着した実話を基に、英国の乗組員をもてなす村人の人情を描く。

 撮影では、「実地」と「実機」にこだわった。厳冬の佐渡で2年がかりでロケ。撮影で使ったダコタは、タイに現存する同機種を買い取り、分解して現地に持ち込んだ。

 「史実」も貫く。当時を知る人からの聞き書きで丹念に描写。「単なる美談にしたくない」と、「胸に蓄えてきた戦後の日本の普遍的なエピソード」をちりばめた。竹原市生まれ、伯父を原爆で亡くした。「故郷で感じていた戦争のむなしさみたいなものが、映像から伝わるといい」(松本大典)

(2013年10月22日朝刊掲載)

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