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社説・コラム

核不使用声明 日本賛同 ピースボート・川崎共同代表に聞く

 核兵器廃絶を訴える活動の一環で米ニューヨークを訪れ、国連総会第1委員会(軍縮)での共同声明の発表を傍聴した非政府組織(NGO)ピースボートの川崎哲共同代表(44)に、共同声明に日本政府が賛同した背景や今後の課題を聞いた。

 かたくなだった日本政府を突き動かしたのは、被爆地を中心とする人々の声だった。その象徴の一つが、広島、長崎の両市長がこの夏に読み上げた平和宣言。政府に声明への賛同を強く求めた。

 ただ、手放しでは喜べない。今回の声明文をよく読んでほしい。「核軍縮に向けた全てのアプローチと努力」を重視するという部分。これは日本の求めで加えられた。

 米国の核抑止力に頼る日本は、核軍縮を段階的に進める政策を掲げてきた。一方、声明の主導国は核兵器の非合法化を目指している。日本は核兵器の非人道性は認めても、非合法化という特定のアプローチは支持しない意志をにじませた。

 日本が同じ日に、やはり米国と同盟関係にあるオーストラリアなどと、もう一つの声明を発表したのも気になる。核兵器廃絶には安全保障面の議論が欠かせない、との立場を示す内容。廃絶に向けたせっかくの機運に水を差すような動きだ。

 今後は、国際社会が非合法化という次のステップに進むかどうかが焦点となる。後ろ向きな日本も「核兵器廃絶なんて究極の夢」と棚上げを続けるわけにはいかない。今回の声明賛同は市民の声が国を動かすことを証明した。これからが正念場。非人道性を掘り下げる議論を核兵器禁止条約の実現につなげるよう、働き掛けを続ける必要がある。(田中美千子)

(2013年10月23日朝刊掲載)

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