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社説・コラム

天風録 「秘密」

 「請放人」。大見出しが先週、中国の地方紙の1面に躍った。釈放を求めたのは自社の記者のこと。国内企業の「不正」を突く記事を書いたところ当局に拘束された。翌日も続けて「再請放人」と▲権力の監視や不正の追及は報道の使命である。だが一党支配の中国となると権力の意に沿わぬ記事は、おとがめを受けるらしい。それが「対岸の火事」では済まなくなってきた。足元からもくもくと煙が上る▲国の「秘密」を漏らして国民に知らせたら処罰する―。特定秘密保護法案が出された。防衛や外交の重要情報を守るというが、権力に都合の悪いことは全て封をしてしまわないか。国民の「知る権利」はどこへ▲お上の情報統制で先行く隣国。新聞やテレビの記者は免許制で、先日も25万人を対象に研修したそうだ。日本や米国に厳しく、ロシアに称賛を…。そんな指導だったとか。頭にたたき込んで試験に通らなければ、免許はもらえない▲捕らわれの記者が自供したと国営テレビが報じた。「現金をもらい、うそを書いた」。あるまじき行為である。大見出しの新聞も一転、おわびを載せた。でもどこか、ふに落ちない。秘めた真相がありはしないか。

(2013年10月28日朝刊掲載)

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