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社説・コラム

天風録 「ミャンマー人形」

 軍政から民主化の道に歩みだしたミャンマーを先週訪ねた。愛らしさに引かれて買い求めた土産は、20体の人形セット。10民族の男女がそれぞれの衣装と帽子で、ひな壇にずらり並ぶ▲仲良く隣り合うのは、人々の願いの表れかもしれない。渡航の直前、爆弾テロが続けざまに起きた。泊まるはずだったホテルも標的に。外から見上げると、窓ガラスの無い一室が異様だった。一部の少数民族の犯行だと政府は言う▲少数民族の数は130を超える。英国から独立した後、自治を求めて政府と争ってきた。その言い分を認めた建国の英雄アウン・サン将軍は政敵に暗殺される。スー・チーさんの父だ。もし将軍が生きていれば、と思わずにはいられない▲民族の問題を抱えるのは中国も同じ。北京の天安門前に車が突っ込んだ事件は、独立を訴えるウイグル族が起こしたと疑われている。テロが許されないのは当然だが、根っこにも目を向けなければ▲少数民族と対話を重ね、和平を目指す―。ミャンマー政府高官の言葉が耳に残った。にっこりとほほ笑む人形のように、民主化とは全ての民族が手を取り合うことだろう。あとどのくらいの月日で、かなうのか。

(2013年10月31日朝刊掲載)

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