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社説・コラム

社説 冬の節電 原発ゼロで乗り切れる

 関西電力大飯原発(福井県)の定期検査入りに伴い、再び「原発ゼロ」が続く。東日本大震災の後、原子力に依存しない初めての冬を迎えそうだ。

 果たして厳寒期は大丈夫なのか。その答えが政府の電力需給見通しで示された。万一の不足が懸念されて節電の数値目標が示されたのは北海道だけ。他の地域については安定供給が何とか見込めるとして、自発的な節電の呼び掛けにとどめた。

 むろん需給バランスのいかんにかかわらず、節電は必要である。今後、原発事故の衝撃が遠のけばエネルギー消費を減らす意識が薄らぐ恐れもあるだけに、この冬を乗り切ることで決意を新たにしたい。

 経済産業省の試算によれば、この冬は中国電力を含む全国の10電力会社全てで、3%以上の供給余力を確保するという。景気回復による需要増も見込んでの数字だ。現時点では家庭や企業の節電努力によって原発分はカバーしているといえよう。

 電力各社からすれば、原発を動かさないままの供給態勢が「綱渡り」であるのは確かだろう。老朽化した設備を含めて火力発電所をフル稼働させることで電力を確保し、同時に円安による燃料のコスト高が経営を圧迫しているからである。

 とはいえ原子力規制委員会による再稼働審査を急がせる理由にはなるまい。いま四国電力伊方原発(愛媛県)などの安全審査が行われている。当初は年内にゴーサインが出るとの見方もあったが慎重なプロセスが踏まれ、越年は確実視されている。仮に規制委が了承したとしても住民の安全をめぐる自治体との調整など問題は山積する。

 安倍政権は原発維持の姿勢をにじませているが、少なくとも当面の電力需給では「原発ゼロ」を前提とするのが現実的である。その上で安定供給のため何をすべきか考えるべきだ。

 ヒントが北海道にある。一定の供給余力があるにもかかわらず2010年度比で6%以上のピーク時の節電目標が示された。本州から電力を融通してもらう容量が小さく、大規模なトラブルなどに対応できないリスクが残るからであろう。

 逆の見方をすれば、電力各社の融通システムがもっと充実すれば不安要因は小さくなる。

 折しも電力システム改革に向けた電気事業法改正案がきのう衆院を通過し、今国会で成立の見通しとなった。2015年をめどに全国規模で電力需給を調整する運用機関の設立も柱の一つだ。この際、前倒しも必要ではないか。目先の再稼働の是非にかかわらず、地域間の供給のアンバランスを解消する手だてをまず急いでほしい。

 この冬の節電と省エネを通じ、わたしたち国民もライフスタイルの在り方を見直す意義をいま一度考えておきたい。

 きのうから暖房温度を抑える運動「ウオームビズ」が始まった。ノーネクタイなどで定着したクールビズに比べ、浸透度はいまひとつの感もある。環境省は重ね着などで室温を下げる基本技に加え、家族や友人で一つの部屋に集まる鍋料理を勧めるなどPRに懸命だ。

 景気が上向きになると、つい節約には後ろ向きになりがちである。そんな今だからこそ3・11を思い返し、一人一人ができることに取り組もう。

(2013年11月2日朝刊掲載)

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