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社説・コラム

ビジネスなう 中国木材(呉市)社長・堀川保幸氏 電力事業に注力する狙いは

製材と発電 好相性 森林資源使い切る

入札の誘い 相次ぐ 売電で脱斜陽産業

 ―木材加工の自社工場から出る樹皮やおがくずを燃料にした木質バイオマス発電所の総出力を、今後3年で2・4倍に高めます。4月には子会社を通じて官公庁や企業など大口向けの売電事業も始めました。電力事業に力を注ぐのはなぜですか。
 製材とバイオマス発電は非常に相性が良い。私たちは山から切り出した丸太を使って建材を製造しているが、どうしても使えない端材が生じる。調達した資材をいかに使い切るかは長年の経営課題。バイオマス発電の燃料としてなら余すことなく活用できる。

 各工場では広大な貯木場を設けて材料を天然乾燥させている。このこだわりも売電には有利。もともとは木材の耐久性向上が目的だが、木材に含まれる大量の水分を飛ばすことで、発電効率も高められる。森林資源を使い、太陽光と風で乾燥させた上で電力に変える。まさに、再生可能エネルギーの象徴だ。

 ―昨年7月に始まった固定価格買い取り制度は追い風ですか。
 採算面で助かっている。従来のバイオマス発電所の役割は自社工場への電力供給がメーンで、余った分を安く電力会社に売るだけだった。新制度では買い取り単価が2倍以上になり、大きな売電収入が見込める。発電が主力事業の一つに成長すると期待している。そのため、売電専業の子会社フォレストパワー(呉市)を設立した。

 ―売電事業にも参入した狙いは。
 地域の電力会社に発電した全量を供給するよりも、官公庁や大手事業所などの「需要家」へ直接販売する方が収入が1割程度多い。一方で、安定供給という重い責任を負うことになる。

 売電を始めて半年が過ぎた。特定規模電気事業者(新電力)として経済産業省に認められ、全国の自治体から電力入札の誘いを受けるなど順調だ。売電先が現在は本社近くの事業所などにとどまっているが、将来的には全国に広げていく。

 ―新たな事業展開を支える人材をどう育てますか。
 売電事業は、需要を予測し発電所の稼働を徹底的に管理する高い技術力が求められる。従業員の能力開発に力を入れており、フォレストパワーに共同出資する電力管理会社からもノウハウを学んでいる。

 ―政府は2016年にも、家庭向けも含めて電力小売りを全面自由化する方針です。
 家庭への売電は考えていない。取扱件数がすごく増えてしまう。需要を予測するのも、発電所で細かく対応するのも困難だ。

 ―国内の製材市場をどうみますか。
 日本の人口は米国の3分の1なのに、年間の住宅の着工戸数はほぼ同じ。これまでは戦後の生活様式の洋風化などで新築が多かったが、今後は米国並みに落ち着く。建材の需要は3分の1に減る。

 ―市場縮小にどう対応しますか。
 やはり売電が鍵を握る。今後は韓国や中国に向けた製品輸出に力を入れる。海外の企業と競うには事業のさらなる効率化が欠かせない。売電収入で山を買い、林道を整備して材料の調達費を下げる。斜陽産業といわれる日本の製材や林業を電力事業で変えていく。(山瀬隆弘)

ほりかわ・やすゆき
 広島県立広高卒。1955年中国チップ工業(現中国木材)に入社。専務などを経て、72年社長。西九州木材事業協同組合代表理事などを歴任し、現在は広島県木材組合連合会理事も務める。76歳。呉市出身。

(2013年11月3日朝刊掲載)

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