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社説・コラム

『晴耕雨読』 町と議会の秘密主義に閉口

 見聞きしたことは一切、口外してはならない―。10月31日にあった島根県津和野町議会の全員協議会で、傍聴席にいた記者は議長に退出を促された。町議会が「秘密会」の開催を議決したためだ。

 秘密会の開催は、地方自治法にも規定がある。公開が原則の議会を非公開とした上、出席者に守秘義務を課す秘密会の開催には、出席議員の3分の2以上の賛成が必要になる。国政に例えれば、改憲に必要な議席数だ。通常の議案より高いハードルから、事態の重大性がうかがえる。

 全員協議会の秘密会開催は町執行部が議長に打診した。議題は、町内業者が町を相手取り、一審で町が敗訴した感染症外来訴訟の控訴方針と、町中心部への「伝建センター」(仮称)整備計画の2項目。町は秘密会を要請した理由を明らかにしていないが、関係者によると、議会に「相手があることだから」と説明したという。

 しかし、訴訟や契約をめぐる対応には当然「相手」がある。むしろ、「相手」が存在しない議案の方が少ないだろう。だが、町議会は十分に議論しないまま、15人中13人の賛成で秘密会開催を認めた。

 秘密会でのやりとりを出席者に尋ねると、全員が「誰が情報を漏らしたか探られる」「懲罰委員会にかけられる」と及び腰だった。町執行部と議会側に共通する前近代的な秘密主義に閉口すると同時に、世論調査でも反対論が根強い「特定秘密保護法案」が成立した後を想像し、不安になった。(石川昌義)

(2013年11月6日朝刊掲載)

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