×

社説・コラム

天風録 「その他」の秘密

 真実はしばしば細部に宿る。だから具体例をごまかすな。駆け出しのころ先輩に叱られた。「など」の使いすぎだと。「をはじめ、その他にも」と小手先で書き換えても記事は通らなかった▲先輩に倣い、くずかご行きにしたい。特定秘密保護法案である。全26条と別表に、「その他」という文言が計35カ所も。明かしてはならぬ秘密の例として「テロリズムの防止に関し収集した外国の政府または国際機関からの情報その他の重要な情報」といった具合に▲これでは時の政権が「その他」を自由自在に解釈できる。しかも何を隠したのかも厚い扉に閉ざされ、国民は知りようがない。もしや秘密という闇を深く濃くし、あえて社会不安をあおりたいのか。そう勘ぐりたくもなる▲古今東西、恐怖政治は事欠かないから。フランス革命当時、政治家ロベスピエールは2627人の対抗勢力を処刑した。テロリストと呼ばれたが「恐怖は正義であり徳性の発現である」とうそぶいた▲法案の第12条に「政治上その他の主義主張に基づき、社会に不安や恐怖を与える目的で…」とある。テロ行為を定義するくだりが、立法の目的と二重写しのよう。これって拡大解釈?

(2013年11月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ