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社説・コラム

社説 中国連続爆破 社会のひずみ 要因では

 再び中国で衝撃的な事件が起きた。内陸部の山西省にある共産党ビル前での連続爆破だ。先月には、少数民族のウイグル族とみられる3人が乗った車が北京の天安門前に突っ込む事件が発生したばかりである。

 中国当局は連続爆破の容疑者として、41歳の男を拘束した。男は動機を「社会に報復するため」と話しているという。今回の事件も、いまの中国社会が抱える問題が背景にある可能性は高いだろう。

 事件による緊張が続く中、共産党の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)がきのう、北京で開幕した。中長期的な経済政策を決める重要会議だ。

 強まる庶民の不満に向き合い、社会を安定に導く道を示すことができるのか。習近平指導部の姿勢と対応が問われよう。

 山西省の連続爆破は6日朝、省都の太原市で発生した。市中心部にある省共産党委員会のビル周辺で8回にも及ぶ爆発があり、1人が死亡し、8人が重軽傷を負った。

 当局は3中総会を前に、手製の爆発物を仕掛けたとみられる容疑者の男を捕らえ、事件は「既に解決した」と説明している。早々に幕引きを図りたいという思惑が感じられる。

 香港の人権団体によると、男は司法の不正を訴えるため、たびたび陳情していたという。当局は事件を公正に捜査し、背景を明らかにする必要がある。

 むろんテロや暴力を許容することはできない。

 だが中国では、開発を優先させる土地の強制収用や、官僚の不正などに不満を抱いた庶民が暴力事件を起こすケースが急増している。

 こうした状況の下で開かれる第18期3中総会は、重い役割を担っているといえよう。5年に1度の重要会議は、中国の大きな経済政策の方針を定める場となってきた。

 現在の改革・開放路線に転換したのは、1978年の第11期3中総会だ。93年の第14期には社会主義市場経済体制を確立する方針を打ち出した。その結果、高度経済成長を実現し、世界2位の経済大国となった。

 しかし貧富の格差は大きく広がり、社会不安につながっている。格差の程度を示し1に近いほど不平等を意味するジニ係数では、中国は2010年に0・61で、警戒ラインとされる0・4を大幅に超える。日本や米国は0・3台にとどまる。

 さらに肝心の経済成長にも陰りが見られる。不動産バブルや、銀行融資以外の金融取引「影の銀行」のリスクが取り沙汰されている。今回の3中総会では、これらの懸念を払拭(ふっしょく)する政策が打ち出されるのか、注目される。

 共産党の総書記に習氏が就任して1年。民主化を訴える活動家の弾圧や言論統制を強めている。社会の安定を図る狙いかもしれないが、逆効果であると言わざるを得ない。

 「中国の夢」の実現を目指す習氏は、海洋強国の建設を掲げる。大切なのは、外に膨張することよりむしろ、自国の社会のひずみを直視することだろう。

 それなのに共産党は3中総会に合わせ、習指導部の政策を否定的に報じないよう求める通知を中国メディアに出した。違反すれば「厳罰に処する」という。少なくとも、こうした報道規制は直ちにやめるべきだ。

(2013年11月10日朝刊掲載)

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