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社説・コラム

天風録 「レイテと福山」

 異常気象を食い止めたと、永遠に記憶される会議にしよう―。地球温暖化の対策を話し合うCOP19で、各国に訴えるやフィリピン代表は涙に暮れた。巨大台風に襲われた母国。1万人とも伝わる犠牲者に、思い込み上げて▲とりわけレイテ島の被害が大きい。猛烈な風は震度3か4かというほどに、ホテルを揺らした。瞬間風速は約90メートルに達し低気圧で上昇した海面にも吹き付けた。高潮は「津波」となって押し寄せ、何隻もの船を陸へ▲レイテ島の名を忘れられぬ人は多いだろう。太平洋戦争の激戦地。6万の日本兵の遺骨が今も島に埋もれている。中心都市タクロバンには、福山から歩兵連隊約2300人が送られた。戦闘や飢えで大半が帰らぬ人に▲両市は33年来の友好都市である。生還した人による遺骨収集や慰霊活動が縁を結んだ。残念ながら目立った交流はないというが、今こそ連帯の力を示すときに違いない。市民グループは義援金を集め始めた▲やはり温暖化による異常気象か。早くも次の低気圧が近づく。傷ついた島に追い打ちを掛けないか心配される。どうか戦争も天災もない穏やかな南国であって。遠い地に眠る人々の叫びでもあろう。

(2013年11月13日朝刊掲載)

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