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社説・コラム

映画で関心深めて ホロコーストや虐殺 広島修道大 三上教授に聞く

 国際シンポジウムで取り上げるホロコーストや、カンボジアとルワンダでの虐殺について、中高生や大学生にも関心を持ってもらうため、これらをテーマにした映画について、広島修道大の三上貴教(たかのり)教授に聞いた。 (宮崎智三)

 ―国際関係を学ぶための映画を紹介した2冊の本(「映画で学ぶ国際関係」と続編=共に法律文化社)を編集されていますね。映画を通して、歴史を学ぶメリットや意義は何か、教えてください。
 歴史教育の問題点だが、現代史の記述が少ない。本を読むことも大切だが、総合芸術でもある映画は、音楽も盛り込まれ情報量が多く、受けるインパクトは大きい。歴史に関心を持って知識を得る、とっかかりになる。

 ―ホロコーストをテーマにした映画は多いですね。
 お薦めはチャプリンの「独裁者」だ。ヒトラーが政権を握っていた、まさに同時代の作品。ヒトラーの危うさや、ユダヤ人の迫害を描いて将来の虐殺を暗示するなど、メッセージ性が高い。「ヒトラーの贋札」はナチスが偽の英国札を造り、終戦時、約40%の英国紙幣が偽札だったといわれる史実がベース。戦争に勝つため、あらゆる手を使ったヒトラーを告発している。

 アカデミー賞作品賞を受賞した「シンドラーのリスト」は世界中の人が見ており、海外の人と話すきっかけにもなる。シンドラーと同様、命懸けでユダヤ人を救った日本の外交官杉原千畝についても知り、視野を広げてもらいたい。

 ポーランドのユダヤ人の苦境を描いた「戦場のピアニスト」や、イタリア映画の「ライフ・イズ・ビューティフル」も名作だ。

 ―カンボジア虐殺の映画は少ないですね。
 「キリングフィールド」(1984年)は、世界がまだカンボジアで本当に虐殺が起きたのか、よく知らなかった時の作品。こんなひどいことが起きたんだと多くの人が知るきっかけになった。

 日本にも「地雷を踏んだらサヨウナラ」がある。内戦時代のカンボジアに入って殺害された戦場カメラマン一ノ瀬泰造の行動を自伝を基に描いている。

 ―ルワンダ虐殺では「ルワンダの涙」が知られていますね。
 「ホテル・ルワンダ」も良い作品だ。ルワンダを植民地支配していたベルギーが、フツ、ツチという民族意識を押し付けた。それが憎悪の種になり、虐殺につながった。外部に敵をつくって内部を固める排外的な考えは決して過去のことではない。歴史を知識として自分の中で消化し、しっかり人権意識を持たないといけない。

 ソマリア紛争に介入した米軍の失敗を描いた「ブラックホーク・ダウン」もぜひ見てほしい。それが一因となり、ルワンダで虐殺が起きても国際社会は介入できなかった。ソマリアでの失敗という一つの点が線になった。そんな歴史の流れがつかめるかもしれない。

 ―親しみやすい映画を通して、虐殺という重い歴史への関心を持てそうですね。
 ただ、あくまでも映画はフィクション。事実に基づいていても、大げさにしたり美的に脚色したりしている。監督がどう捉え、どんなメッセージを伝えたいのか、考えないといけない。監督とは違う見方がないか―など疑問を持ちながら見ることも必要だと思う。

(2013年11月18日朝刊掲載)

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