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社説・コラム

「CTBT 17年までに発効」 機構準備委 ゼルボ事務局長に聞く

 核実験の全面的な禁止を目指す包括的核実験禁止条約(CTBT)機構準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長(50)が20日、視察で初めて広島市を訪れ、中国新聞社のインタビューに応じた。「自分の任期が終わる2017年までにCTBTを発効させたい」と意欲を見せた。

 条約発効は米国、中国など未批准の8カ国の批准が絶対条件。オバマ大統領はブッシュ前政権の方針を転じ、批准を目指すと宣言した。ゼルボ氏は「米国の批准は発効の大きな原動力になる。大統領の言葉を信じたい」と強調。就任間もないことし8月、中国を訪問したことも明かし「前向きで建設的な議論ができた」と述べた。

 各国の閣僚経験者、元大使たち計18人に働き掛け、ことし9月に「賢人グループ」を結成した。「豊富な外交経験の持ち主ばかり。8カ国に批准を促してもらう」と期待する。

 オーストリア・ウィーンに本部を置くCTBT機構準備委。世界約280カ所に地震波などの観測施設を持ち、北朝鮮が2006年以降に実施した3回の核実験を探知した。「核実験の監視システムは、ほぼ完成した」として、米国などが批准する環境は整ったと力説する。

 初めての広島訪問。「被爆地が見事に復興し、繁栄していることに正直驚いた」と言う。「ヒロシマは原爆の悲惨さを訴え続け、CTBT発効に力を貸してほしい。私も広島で見聞きしたことを未批准国に伝える」

 ゼルボ氏は西アフリカのブルキナファソ出身の地球物理学者で、外務省の招きで来日した。この日は松井一実市長と懇談し、中区の平和記念公園を訪れた。21日は原爆資料館を見学した後、長崎市に向かう。(田中美千子)

包括的核実験禁止条約(CTBT)
 核爆発を伴うあらゆる核実験を禁じる条約で、1996年に国連総会で採択された。183カ国が署名し、うち161カ国が批准済み。条約発効には研究・発電用の原子炉を持つ全44カ国の批准が必要だが、米国、中国、エジプト、イラン、イスラエルが批准していない。北朝鮮、インド、パキスタンは署名もしていない。

(2013年11月21日朝刊掲載)

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