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社説・コラム

天風録 「年用意」

 鏡餅や松飾り、華やかな羽子板まで。混雑の中で次々売れていく。幼いころ見た「歳(とし)の市」のにぎやかだったこと。新年に託す願いは、いつの世も。いま縁起物はスーパーで買える。コンビニや100円ショップにも▲畳替えや障子の張り替えは、あまり見かけなくなったが、年用意は気ぜわしい。仕事を納め、身の回りをすっきりさせれば、おのずと好スタートが切れる。節目を迎える際のわたしたちの流儀だろう▲沖縄県の仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事の春支度はすっかり整ったらしい。「いい正月になる」。首相と会談した数日前に、そう語っていた。5年以内の普天間飛行場の運用停止など、基地負担の軽減に「驚くべき立派な提示をいただいた」と▲辺野古埋め立ての申請を承認した。信念を曲げ、県内受け入れへ苦渋の決断かと思いきや「県外移設を求める公約は変えていない」。何とも奇妙な論理。知事なりの思惑があるようだが、基地は一体どこへ収まるのか▲大掃除で押し入れを開けてみたら、放り込んできたモノがぎっしり。移す先も見当たらず、結局また戸を閉める―。沖縄に押し付けた基地負担は片付かないまま。胸につかえを残して、年が暮れる。

(2013年12月28日朝刊掲載)

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