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社説・コラム

『この人』 高校生災害復興支援ボランティア派遣隊のサポーター代表 日上雅義さん

若い感性 被災地で成長

 「お金はないが感性の豊かな中高生にこそ、東日本大震災の被災地を体験させたい」。そんな思いから、ネックとなる旅費を生徒が自ら街頭募金をして賄う方法を考え出した。呼び掛けに応じたさまざまな学校の生徒たちで昨年3月に派遣隊を結成。昨年末を含めこれまで計5回、延べ約65人が福島県を訪れた。

 仮設住宅でお年寄りの話を聞いたり、お好み焼きを振る舞ったりする。成果が認められ、派遣隊は昨年末、青少年の奉仕活動をたたえるボランティア・スピリット賞(プルデンシャル生命など主催)の奨励賞に選ばれた。

 県立高の国語教諭。震災直後に訪れた岩手県での救援活動の体験を授業で話すと、多くの生徒から「自分も行きたい」と反応があった。派遣隊の構想の原点となった。2012年には家族で福島県を訪れ、被爆地ヒロシマと重ね合わせた。「避難者が多く残る今しかない」。派遣隊の結成を急いだ。

 活動を始め、高校生の持つ力に驚くことが続いた。仮設住宅の自治会長からは「若い人が来てくれるだけで元気になる」と感謝される。広島でも「高校生が行くなら」と、20以上の企業・団体がお好み焼きの技術指導、手土産の提供などで協賛してくれた。

 生徒の成長が何よりうれしい。派遣をきっかけに、広島の被爆樹木の種を福島県にまく活動を発案してきた生徒もいる。「それぞれが被災地で感じたものを糧に、考えを膨らませてくれたらいい」

 「まず1年」と始めた活動だが、知人から「新潟県中越地震では3年後から心が折れる人が増えた」と聞かされ、継続を決めた。支部をつくり活動を広げるのが目標だ。

 休日にそばを打つのが趣味。広島市安佐南区で妻、長男、次男と4人で暮らす。(馬場洋太)

(2014年1月3日朝刊掲載)

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