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社説・コラム

『潮流』 トップ不在の判断

■防長本社編集部長 番場真吾

 基地や原発は国全体の問題でありながら、特定の自治体に負担を強いる地域問題でもある証拠だろう。国策の行方を首長の判断が左右する局面が昨年末、相次いだ。沖縄県は基地の県内移設へ埋め立て申請を承認。島根原発の再稼働は、島根県と松江市が安全審査への申請を容認した。

 沖縄振興予算の大盤振る舞いなど、安倍政権は国策のためには地域対策を強力に進める構えを見せる。自治体のトップのリーダーシップがいっそう問われる年になるのではないか。

 住民の暮らしや安全に大きく影響する判断ではなおさら、大前提として求めたいのが透明性である。20年ほど前、国会を取材していた。政治不信が頂点に達し、選挙制度の改革が動きだした時代。不信の根は政治とカネだけでなく、だれが決めているか分からない不透明さにもあった。

 その不透明さは今も足元にある。原発建設計画の予定地を抱え、岩国基地もある山口県。そのトップが不在という異常な年明けを迎えた。山本繁太郎知事が昨年10月末から病気で長期療養中のためだ。

 知事の判断が必要な案件は山積している。県幹部はその都度、指示を仰いでいるとはいう。だが、どう判断しているのか県民からは全く見えない。昨年12月、空中給油機の岩国移転受け入れを福田良彦岩国市長が容認したときも、知事不在の県は「地元の意向尊重」と述べるに終始した。

 県のホームページには、しきたりを打破するということしのえとの意味を引いて、山本知事名で県政への意欲を示すあいさつ文があるが、動画の情報発信も手軽にできる時代だ。県民が納得できるメッセージの伝え方が必要だろう。それこそしきたりの打破である。

 知事は山口県に1人しかいない。それもできないのであれば、早期の進退の決断が避けられまい。

(2014年1月7日朝刊掲載)

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