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社説・コラム

社説 原発政策の行方 依存低減 本気度見えぬ

 「エネルギー源の多様化を図りながら、原発への依存度を可能な限り低減していく」。安倍晋三首相がおとといの年頭会見で述べた基本方針である。

 依存度の低減とはどの程度か。国民目線から納得のいくものか。原発再稼働に向けた手続きが加速しそうな今年、厳しく問われるだろう。

 電力会社は全国9原発の計16基について、新たな規制基準に適合するかどうかを確認する安全審査を原子力規制委員会に申請している。まず、愛媛県の伊方原発3号から結論が出されるとみられる。

 四国電力は当初、昨年中の再稼働を視野に入れていたが、規制委の審査が終わらず越年した。引き続き春の再稼働を目指しているものの、その通りになるかどうかは見通せない。

 自民党内には審査を迅速化するよう求める声がくすぶる。業界のいらだちを受けてのことだろうが、再稼働への政治的圧力に等しい。厳に慎むべきである。民主党政権時代、独立性の高い規制組織の設立を求めたのは当の自民党だったはずだ。

 原発再稼働に対する国民の反発は依然根強い。規制委が慎重を期すのは当然である。

 政府は近く閣議決定するエネルギー基本計画で、原発を「基盤となる重要電源」と位置づけ再稼働の推進を明記することになりそうだ。中国電力の上関原発を含めた新増設方針までは盛り込んでいないものの、「原発回帰」の色合いは強い。

 原発再稼働へ前のめりになる前に、本腰を入れるべき問題がある。高レベル放射性廃棄物の処分地が決まらないまま、日本国内に1万7千トンもの使用済み核燃料がたまっている。

 政府は先月、自治体の応募を前提とする選定方法から、国が主導して候補地を示す方式に変えると決めた。地域に押しつけるやり方でうまくいくとは思えない。

 そんな中、日本原燃が青森県六ケ所村に建設中の使用済み核燃料再処理工場の審査を規制委に申請した。審査には相当の時間がかかるとみられているが、施設が稼働すれば原発燃料にするプルトニウムを年7トン取り出せるようになるという。

 だが、使用済み燃料を多少は減らせても、最終処分場問題が解決することはない。「原発依存度を低減」させながら、一体どうやってプルトニウムを使い切るのか。

 一方、最悪の事故を起こした日本が何事もなかったかのように原発輸出を進めることに対しても、違和感を覚えている国民は少なくないだろう。

 首相はきのうトルコのエルドアン首相と東京都内で会談し、原子力協定の発効に必要な国会承認を急ぐことを確認した。

 日本は核保有国のインドなどとも原子力協力を進める方針である。経済的な恩恵はあるのだろうが、それでいいのか。民意と被爆国が立つべき位置を踏まえ、議論を尽くすことが国会に求められる。

 「原発依存度の低減」は、代替エネルギーの促進と表裏一体でもある。政権は成長戦略で、太陽光、風力など再生可能エネルギーの産業を育てる構想を打ち出している。掛け声で終わらせず、どこまで本格的にてこ入れするか。これも本気度が問われる。

(2014年1月8日朝刊掲載)

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