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社説・コラム

『中国新聞を読んで』 平尾順平 平和会議 関心高めたい

 被爆70年を2015年に控え、中国新聞は元日の朝刊で岸田文雄外相へのインタビューと、広島市で今年開かれる「軍縮・不拡散イニシアチブ」(NPDI)外相会合などについて特集を掲載した。

 節目の70年を目前にし、岸田外相も地元選出の衆院議員のため、4月のNPDI外相会合に注目したい。一方、こうした国際的な会合が広島で開かれるのに、ほとんどの市民は内容などを知らないのが実情ではないだろうか。

 広島市では、被爆65年の10年に「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」が開かれた。私個人は関係者としてこれに関わる機会を得たが、知人、友人を含めた市民には「そんなの広島でやっていたの」との反応が多かった。

 各国から集まった報道機関は60社近い。世界中で記事になり放映もされたが、お膝元の広島での盛り上がりは、いまひとつだったと言わざるを得ない。

 核兵器の問題は、無関心でいることはできても、もはや誰も無関係ではいられない。特に広島の地では、行政だけでなく市民のレベルでも、より関心を持って関わっていきたいテーマではないか。

 今年のNPDI外相会合のように、核軍縮、平和、紛争解決などに関する国際会議を広島で開くことが世界のスタンダードになってほしい。過去を踏まえ、未来について議論し、理解し合うためにふさわしい街だと思うからだ。

 そのためには行政や一部の関係者にとどまらず、市民、県民全体のレベルで、さまざまな側面から関わる必要がある。幅広く呼び掛け、関心を喚起するために新聞が果たすべき役割は大きいと思う。

 昨年末以降、安倍政権は集団的自衛権行使の容認に向けた動きを強め、武器輸出政策の緩和でも具体的な方針を打ち出した。日本がそうした状況にあるいまこそ、平和都市としての「広島」の意味があらためて問い直されている。

 被爆70年を機に「被爆都市広島」が、本当の意味での「平和都市広島」として具体的に動き始めることができるよう、市民の一人として考え、行動していきたい。(読者モニター=広島市中区)

(2014年1月31日朝刊掲載)

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