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社説・コラム

社説 山口知事選きょう告示 地域の明日を考えよう

 山口県知事選がきょう告示され、17日間の選挙戦が始まる。

 自民、公明両党が推薦する元総務省官僚、共産党公認の元周南市議、生活の党が推薦する元衆院議員の新人3人が立候補を予定している。

 山本繁太郎前知事の病気辞職に伴う選挙である。在任が1年半に満たなかった前知事はおおむね、地元選出の安倍晋三首相の政策に沿って県政を運営したと総括できるだろう。

 裏を返せば、短期間では解消できない課題がさまざま残っている。各候補者は地域の将来を見据え、多角的な観点から論じ合ってもらいたい。

 具体的な争点を大ぐくりにすれば、3点挙げられよう。

 まずは地元経済をどう再生するかだ。アベノミクスによる景気の回復基調が県内全域に根付いたとはいえまい。

 前知事は「やまぐち産業戦略推進計画」を策定した。コンビナートをはじめとする瀬戸内産業の再生や、医療と環境関連産業の育成・集約、県内宿泊客の2割増などを掲げる。方法論として前知事は、港湾や第2関門橋などのインフラ整備にも力点を置いた。

 これらを継承するか否かを含め、地域の活力を高める具体策が問われる。もちろんリーダーの行動力や発信力は不可欠だ。

 次いで原発問題である。上関町への新規立地の前提となる公有水面埋め立て免許の延長申請について、前知事は許可するかどうかの判断を先送りした。

 安倍政権が上関原発の推進を明言しないなか、地元では知事選さなかに町議選があり、町民の判断も示される。それを受けて新知事がどう判断するかは、全国的にも注目を集めそうだ。

 原発の再稼働や新増設を含めたエネルギー政策は、地域の産業や私たちの暮らしに深く関わる。各候補が大いに論じればいい。さらに知事選では少なくとも、原発誘致に代わる上関町の地域振興策を議論してほしい。

 そして安全保障問題である。米海兵隊岩国基地への空母艦載機移転が具体化すると、極東最大級の米軍基地となる。

 しかも安倍政権が集団的自衛権の行使容認へと転じることになれば、自衛隊との連携・一体化が進み、基地のありようがさらに変貌する可能性がある。低空飛行訓練の増大を想定するとなおさら、地元岩国市だけの問題では済まなくなる。

 これらの争点に加え、地域の明日を考える際に避けて通れないのは人口減の問題ではないか。とりわけ「全国より10年早い」とされる山口県は、深刻な局面を迎えるかもしれない。

 国立社会保障・人口問題研究所は、2010年に145万人だった県の人口は30年後、107万人にまで減ると推計している。全国の総人口に比べて減少幅は約10ポイントも大きい。なかでも15~64歳の生産年齢人口は30年間で実に30万人も減り、現在の3分の2になるという。

 働く場があり、若者が定住し、高齢者がすこやかに生きる。魅力にあふれ、暮らしやすい地域づくりは一朝一夕にはいかないが、手をこまねくと間違いなく衰退を招く。奮闘する県民を市町とともにどう支えていくかは、今後の県政のかじ取りに欠かせない視点であろう。

 投開票は23日だ。各候補の訴えを吟味し、1票を託そう。

(2014年2月6日朝刊掲載)

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