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社説・コラム

社説 もんじゅ「増殖炉」見直し 本当に転用できるのか

 政府の新たなエネルギー基本計画で、高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)について実用化の見直しが検討されていることが分かった。発電しながら消費分以上の核物質を生み出すという増殖炉の、看板を下ろすことを意味するのだろう。

 もんじゅは安全性とコストの両面でかねて問題が多い。

 臨界に達した1994年の翌年、ナトリウム漏れ事故を起こした。2010年に試運転を再開したが、同年、炉内で機器を落としたまま停止した。さらに内規に反する1万個近い機器の点検漏れが、福島原発事故の後の12年11月に発覚。運転再開を見合わせるよう、原子力規制委員会が命じている。

 ほとんど稼働していないにもかかわらず、もんじゅには1兆円もの巨費が投じられてきた。10年策定の現行のエネルギー基本計画でも、もんじゅの研究成果を反映させた上で「2050年より前の商業炉の導入」を目指すとしていたほどだ。

 方針転換するにしても、遅すぎるとしか言いようがない。ここまで放置した責任の所在は厳しく問われるべきだ。

 今回、増殖炉を見直す代わりに、高レベル放射性廃棄物の量を減らす「減容化」の研究に転用する案が浮上している。

 もんじゅは、プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX)燃料を使う。減容化研究はこのMOX燃料を生かした実証実験になる。日本原子力研究開発機構(原子力機構)がおととし、増殖炉研究とともに計画案を示していた。

 原発の使用済み核燃料の最終処分方法が見通せない日本の現状が背景にはあろう。

 確かに座視できない問題だ。MOX燃料は高速増殖炉やプルサーマル発電の原発で使われるが、現時点で国内ではいずれも稼働していない。このため使用済み核燃料に含まれるプルトニウムは国内にたまる一方だ。核不拡散の面で海外から疑念を持たれかねない。

 といって、トラブル続きだったもんじゅを本当に転用できるのだろうか。原子力に対して国民が不信感を募らせている中で不祥事が続いた原子力機構の組織風土。それは改まったのか、まずこの点が問われよう。

 また、研究とは言うものの、「核のごみ」の保管施設になるのではないかという地元の声が出たとしてもおかしくない。

 もんじゅは青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場とともに、核燃料サイクルを構成する。しかしプルトニウムの使い道がなければ、成り立たない。

 新たなエネルギー基本計画では、この機に核燃料サイクル自体の全面見直しに着手すべきではないか。その上で、使用済み核燃料の最終処分に有効な技術開発が安全な環境で行われるのであれば、一考に値しよう。

 茂木敏充経済産業相はおとといの閣議後記者会見で、もんじゅの見直し方針については「決まっていない」としている。一方で、自民党側は減容化研究優先を求めているようだ。

 だが、最終処分に有効な手段だとしても、原発再稼働への手続きを加速させようという意図が見え隠れしているなら首をかしげたくなる。「原発への依存度を可能な限り低減していく」という安倍晋三首相の年頭会見の趣旨とも矛盾しよう。

(2014年2月9日朝刊掲載)

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