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社説・コラム

社説 日米関係 あつれき 解消するには

 強固な同盟を誇ってきた日米関係に隙間風が目立つ。

 決定打となったのは、安倍晋三首相の靖国神社参拝だろう。中国や韓国とのさらなる関係悪化を憂い、「失望した」というコメントまで米大使館から飛び出したのは記憶に新しい。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画が進まないことをめぐって、米国はいらだちを深めているともいわれる。対米関係改善の糸口は見えてこない。

 先日のキャロライン・ケネディ駐日大使の沖縄訪問を振り返れば、表向きは友好ムードにも映ろう。名護市辺野古地区への移設反対を掲げ、再選を果たしたばかりの稲嶺進市長とも面会した。

 地元の高校生と交流し、笑顔を見せた。沖縄戦の全戦没者の名前を刻んだ「平和の礎(いしじ)」がある糸満市の県平和祈念公園を訪ねた。

 「基地負担の軽減に力を尽くさないといけない」と語るにとどまったことから、肩透かしという批判も県内では聞かれたようだ。

 一方、稲嶺市長との距離を置く日本政府よりも評価できるという声もある。

 いずれにしても沖縄訪問の意義は確かにあろう。移設に固執する日米両政府の官僚から説明を受けているだけでは、沖縄の世論を的確に理解し、大統領にしっかりと伝えることは難しいと思われるからだ。

 ただ現実の日米関係は、ケネディ大使のソフトなイメージで好転するとは思えない。むしろ厳しさは増している。

 おととい発表された、オバマ大統領のアジア訪問日程からも歴然としている。日本滞在の予定は1泊2日と、当初の見通しより短縮された。

 韓国訪問を日程に加えたのだという。政権内外から日本だけの訪問では、米韓関係の上で望ましくないという指摘を受けたようだ。日韓双方に配慮しながら、関係改善の仲立ちに自ら乗り出すという判断もあったのだろう。

 広島、長崎両市長が駐日大使館を通して要請していた被爆地訪問は、結果として割を食うことになりそうだ。核大国の首脳が被爆地を訪れる機会が、今回実現しないのは残念である。

 歴史認識や靖国神社参拝、従軍慰安婦問題をめぐり、中韓と安倍政権の関係は冷え込むばかりだ。隣国同士でありながら首脳会談すら実現していない。

 第2次世界大戦の戦勝国である米国内からも批判が噴き出している。オバマ大統領は訪日の機会を捉え、言動について安倍首相に自制を強く促すとみられている。

 米国は同時に、日米同盟の強化も求めるだろう。つまるところ、普天間移設計画や日米安全保障協力の進展である。基地負担を問い続ける沖縄の民意に反することになりかねない。

 さらなる懸案もある。環太平洋連携協定(TPP)の行方である。日本が「聖域」と位置付けてきた農業の重要5品目などについて、米国は関税撤廃を迫っている。交渉は手詰まりの状態にある。

 オバマ大統領は4月22日に来日する予定だ。日米同盟の強化に資する合意がなされても、そのために過剰な譲歩までするのであれば困る。

(2014年2月15日朝刊掲載)

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