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社説・コラム

社説 核「非人道性」会議 世界の潮流 より確かに

 核兵器を廃絶する機運が、再び力強いうねりとなるよう願わずにはいられない。

 メキシコ政府が主催した第2回核兵器の非人道性に関する国際会議が、議長総括をもって2日間の日程を終えた。

 146カ国の政府代表や国際機関、研究者が集い、核兵器の使用がもたらす非人道的な被害について議論を深めた。

 核兵器の非人道性に着目した議論は近年、国際的に大きく注目を集め、確かな潮流となりつつある。核保有国はいつまでも目を背けてはいられまい。被爆地からもさらに声を上げ、廃絶への議論を主導していきたい。

 今回注目すべきは、議長総括に盛り込まれた国際社会の決意だろう。核兵器の危険性を示した上で「法的拘束力のある措置を取るべきだ」と明言した。

 さらに広島、長崎への原爆投下から70年となる来年までに禁止や非合法化へ向けた動きを加速するよう促し、「もう後戻りはできない」と強調している。

 核兵器のない世界を目指すとしたオバマ米大統領のプラハ演説から5年。あらためて廃絶の機運を盛り上げようと、期限付きの強いメッセージを打ち出した意義は大きい。

 ノルウェーのオスロで昨年3月に開かれた第1回会合は、参加した120カ国余りの大半が核兵器の非人道性を認めたものの、残念なことに今後の運動にどうつなげていくかの議論は乏しかった。それが今回、大きく前進した印象もある。

 核軍縮が進まず、核拡散の懸念も消えない国際社会の現状に対し、全世界的な市民のいらだちが背景にあるといえよう。

 非人道性を訴える声明への賛同状況を見ても、おととし春の核拡散防止条約(NPT)準備委員会では16カ国だけ。それがその年の秋の国連総会では34カ国、続く昨年春のNPT準備委では80カ国へと徐々に増え、秋の国連総会では日本政府も含めて125カ国が賛同した。

 化学兵器、地雷、クラスター弾と、いずれもその非人道性や無差別性に着目した国際世論のうねりが禁止条約の策定につながっている。次は核兵器だという認識が、市民だけでなく非保有国の間で深く浸透してきた表れだろう。

 もちろん、廃絶へのステップを進めるには課題が多い。核軍縮ですら保有国の意思に大きく左右されるのが現実だ。しかも安全保障上で有利だとの立場から、段階的に進めていくスタンスから抜け出していない。

 保有国を禁止条約の交渉のテーブルに着かせるには、相当の困難が伴うのは間違いない。

 だからこそ、被爆国であり、米国の同盟国である日本のスタンスが重要になる。ところが日本政府は米国の「核の傘」に自国の安全保障を依存しているため、核兵器の非合法化を口にしようとはしない。

 やむを得ない場合は米軍による日本国内への核持ち込みを認めるという、おとといの衆院予算委での岸田文雄外相の発言もその延長線上にある。

 廃絶の訴えとの矛盾がまたもや露呈した格好だ。被爆地は「裏切られた」と憤っている。

 その広島で4月、軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)外相会合がある。メキシコの論議を踏まえ、廃絶へと行動を起こす場にしてもらいたい。

(2014年2月16日朝刊掲載)

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