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社説・コラム

社説 公明党の責務 ブレーキ役は大丈夫か

 連立政権内で、公明党はブレーキ役を自任してきたのではなかっただろうか。

 先週の衆院予算委員会で、同党の太田昭宏国土交通相は野党から問いただされている。憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使が可能とする安倍晋三首相の答弁を認めるのか、と。

 太田氏は「同意している。違和感はない」と答えた。閣内不一致を避けようとしたとみられるが、解釈改憲を是としたとも受け取れる。山口那津男代表は「党の方針は変わらない」と火消しに追われた。

 集団的自衛権の行使容認には反対の姿勢を貫いてきたはずである。首相を追認するだけとなれば、党そのものの存立を揺るがすことになりかねない。

 安倍首相は、集団的自衛権の議論で強気の発言を繰り返している。先週は国会で、政府の憲法解釈について「最高責任者は法制局長官ではない。私が責任を持っている」と述べた。

 これには身内の自民党からも、国民の目線を考えよ、時の政権が憲法の解釈を勝手に変えていいわけではない、と批判の声が上がった。憲法が国家権力を制限する立憲主義を踏まえれば、当然のことだろう。

 山口代表は当面、安倍首相が設けた安全保障に関する有識者懇談会の議論を見守る考えを示している。

 しかし、懇談会のメンバーは集団的自衛権の行使に積極的な人を中心に選んでいる。4月にも、行使を容認する報告書をまとめる見通しだ。

 昨年、特定秘密保護法をめぐる臨時国会の審議でも、公明党の姿勢に首をかしげる声が目立った。「もっと慎重に審議すべきである」との注文が多くの国民から付いていたにもかかわらず、自民党とともに成立に向けて突き進んだ印象がある。

 ただ、ここにきて、軌道修正を図ろうとするような動きも見て取れる。

 例えば、秘密保護法で秘密の指定が妥当かどうか、監視する国会内の組織についての議論である。

 漏えいを恐れ、常設組織とすることに否定的な自民党に対し、「情報委員会」(仮称)の常設を求めている。特定秘密を可能な限り、チェックしようという狙いだろう。

 また、大津市で起きた中学生のいじめ自殺に絡んでの教育委員会改革でも、くぎを刺そうとする動きが見える。

 当初、安倍政権は教育行政の最終的な権限を丸々、自治体の長に移そうとしていた。現行の体制では、責任の所在が不明確との指摘もあるためだ。

 教育への政治介入を懸念し、公明党は反対している。それもあって自民党が練り直したのが、教育長と教育委員長を兼務する新たな常勤ポストに責任を一元化する案である。この案を軸に、協議を進めるという。

 通常国会では今後、集団的自衛権の行使をめぐる議論が本格化しそうだ。安倍首相は安保政策で考え方の近い日本維新の会や、みんなの党との連携を視野に入れるかもしれない。

 それでも、公明党は昨年の参院選で連立政権のブレーキ役の重要性を訴え、議席を増やしたことを忘れてはなるまい。大半の野党が、本来の「野党らしさ」を見失う中で、その責務は重みを増している。

(2014年2月17日朝刊掲載)

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