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社説・コラム

『記者縦横』 首相発言 「おごり」ないか

■東京支社・城戸収

 「権力を握った人間は振りかざしたがるもんだ。人の胸の中にそういう『種子』が潜んでいることは歴史が証明している」。以前、亀井静香元金融担当相(広島6区)に取材した時に聞いた言葉だ。このところの安倍晋三首相の強気な発言を聞いて思い出した。

 「(憲法解釈の)最高の責任者は私だ。政府答弁に私が責任を持って、その上で私たちは選挙で国民の審判を受ける。審判を受けるのは内閣法制局長官ではない」。12日の衆院予算委員会で、集団的自衛権の行使容認をめぐって、首相はそう答弁した。

 一面ではその通りかもしれない。だが、首相交代のたびに解釈を変えられるほど、憲法が軽い存在であるはずがない。そもそも、なぜ今変えねばならないのか。行使を認めることは、平和主義を掲げてきた戦後日本の転換点になりかねず、容認ありきのような口ぶりもおかしい。

 特定秘密保護法に関しても違和感を覚える発言があった。1月の自民党大会。「報道の自由や知る権利が侵害されることはない。私たちが言っていることが正しいと断言したい」。権力者が意図を持って使えば情報統制を強めることができる法律だ。将来にわたってその可能性がないと、どうして言い切れるのか。

 自民党は、2009年の野党転落の理由を「長年政権与党だったおごり」と総括したはずだ。政権を奪い返して1年2カ月。亀井氏の言う「種子」が、首相に芽吹き始めたのだろうか。

(2014年2月21日朝刊掲載)

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