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社説・コラム

天風録 「国会の葬式」

 100人以上が参列して花を手向けたという。おととい、高知市で一風変わった葬儀がしめやかに営まれた。祭壇には、穏やかな笑みの遺影ではなく威風堂々とした国会議事堂の写真が飾られたらしい。つまり国会のお弔いである▲特定秘密保護法を成立させたのは、議会政治にとって自殺行為だ―。そんな危惧を抱いた元国会議員らの呼び掛けで開いた。ぎょっとするようなパフォーマンスは明治時代にあった言論弾圧への抗議行動を手本とした▲132年前、明治憲法を批判した高知の新聞社が発行禁止の処分に。そこで「新聞の葬式」を出す。紙面を棺(ひつぎ)に入れて、歩いたという。自由民権運動の発祥の地らしい逸話といえるだろう。その気骨たるや、今も学ぶべきところが多いはずだ▲通常国会開幕からきょうで1カ月。数に勝る与党のおごりと、追及しきれない野党の体たらくが目につく。水膨れした予算案も生煮えの審議のまま近々、衆院を通過しそうだ。これで言論の府と胸を張れるのかどうか▲これから国会では秘密保護法の関連法案が焦点となってこよう。平和憲法をめぐる解釈変更の論戦も続く。「棺おけなど、入らんぞ」と奮起してもらわないと困る。

(2014年2月24日朝刊掲載)

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