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社説・コラム

社説 エネルギー基本計画 修正しても変わらない

 新たなエネルギー基本計画の政府案が、きのう明らかになった。与党との協議を経て3月中の閣議決定を目指すという。

 東京都知事選で原発政策が争点に浮上したうえ、与党内の慎重論もあって、原発推進のトーンを弱めるなど当初案を修正した。だが、原発再稼働を進める方針に変わりはない。

 茂木俊充経済産業相は閣議後の記者会見で「いくつかの変更点はあるが、基本的に方向性が変わったとは認識していない」と述べた。知事選で圧勝した安心感もあるのだろう。

 エネルギー基本計画は3年をめどに見直し、現在の計画は2010年に策定されている。原発事故の後、民主党政権が30年代に原発稼働ゼロを目指す方針を掲げて計画の見直しに着手したが、政権交代で頓挫した。

 これに対し、安倍晋三首相は就任直後の昨年1月、成長戦略の一環としてエネルギー戦略をゼロベースで見直すとした。

 確かに「原発ゼロ」となれば、電力需給の逼迫(ひっぱく)と電気料金の上昇を招く。原子力関連の技術や人材が失われれば、これからの廃炉作業にも響こう。

 だが、原発依存度の引き下げ自体は安倍首相もことしの年頭会見で述べている。その引き下げ目標を示さないまま、原発再稼働を進める、と新たなエネルギー基本計画案に明記しているのは首をかしげたくなる。

 当初案では原発を「基盤となる重要なベース電源」と位置付けていたが、「重要なベースロード電源」に訂正した。一定の電力供給を可能にする電源、と解することができよう。しかし、二つの違いが分からない。

 こうした曖昧な表現は、核燃料サイクルの記述についても共通しているのではないか。

 その柱でありながら長年にわたってトラブルが続く高速増殖炉原型炉もんじゅ(福井県敦賀市)の扱いがそうだ。「研究計画に示された成果のとりまとめを目指す」としていて、実用化見直しの文言はない。ただ、「徹底的な改革を行う」との表現は、運営する日本原子力研究開発機構(原子力機構)の組織改革を含め、より厳しい姿勢で臨むことを意味していよう。

 もんじゅの場合、使用済み核燃料の「減容化」研究に転用する案が浮上している。この機に日本の核燃料サイクル自体の見直しを検討すべきだろう。

 使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理よりも、地下深く埋める直接処分の方が低コストだという試算は既に出ている。直接処分も処分地の選定をはじめ困難な道のりが予想されるが、原発再稼働か否かにかかわらず、「核のごみ」は未来永劫(えいごう)避けられない問題ではないか。

 原子力事業は国策民営で進められてきた。安倍政権は困難な問題にこそ、責任を持って正面から取り組むべきだ。

 福島を再生可能エネルギー産業の拠点とする一項も盛り込んだ。これは「脱原発」のプログラムの一つといえよう。再生可能エネルギーについては「2013年から3年程度導入を最大限加速し、その後も積極推進する」としている。

 だが、目標数値が示されていない以上、空手形に終わりかねない。今のままでは安倍首相が提唱する「エネルギーのベストミックス」が見えないままだ。

(2014年2月26日朝刊掲載)

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