×

社説・コラム

社説 震災3年 福島第1原発 廃炉への道筋を確実に

 間もなく東日本大震災から3年がたつ。ところが東京電力福島第1原発の事故に見舞われた福島県では、いまだに13万人を超える住民たちが避難生活を余儀なくされている。

 当初は今月末までに終える計画だった除染にしても、大幅に遅れているのが実情だ。多くの避難住民にとって、古里に帰るめどは立っていない。

 福島の復興には、住民の生活再建が不可欠なのは言うまでもないだろう。政府や東電がいっそう取り組まなければならないのはもちろんである。

 ただ災いの根源である原発事故そのものが依然として収束していない。肝心の廃炉への道筋はおぼつかない。

 まず解決しなければならないのは、汚染水の問題である。福島第1原発の1~4号機の建屋に、1日400トンもの地下水が流れ込んでいる。

 東電は敷地内に設けた千基余りの地上タンクに保管しているが、たびたび漏えい事故を起こしている。先月も100トンの高濃度汚染水が漏れた。作業ミスが一因だったようだ。

 線量の高い過酷な現場である。とはいえ、こうもトラブルが頻発するようでは、東電の人員配置やタンク管理の手順が適切なのか、疑わざるを得ない。

 このため汚染水問題について政府は「東電任せにせず、前面に出る」との方針を示す。地下水の流入を防ぐため、2015年度までに1~4号機を取り囲む凍土壁を築く計画で、約470億円の国費を投じる。

 深刻化する現状からすれば、それだけでは十分とはいえまい。当面、汚染水をどう管理するのか。政府はもっと積極的に手だてを講じるべきだ。

 廃炉作業の鍵を握る核燃料の取り出しも、まだ初期の段階でしかない。4号機にある使用済み核燃料プールからの燃料搬出が昨年11月、ようやく始まったばかりである。

 炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機では、溶けた核燃料が原子炉の圧力容器を突き抜けて外側の格納容器に落ち、散らばっているようだ。どうやって取り出すか、方法は確立されていない。

 そのためロボットなどの技術開発から手掛ける必要がある。30~40年かかるとされる廃炉の期間も、はっきり分からないのが実態だろう。

 東電は来月、廃炉部門を社内分社化するが、どれだけ取り組みが強化されるのかは未知数と言うほかない。できるだけ早い時期に廃炉の道筋を確かなものにするには、国際的な技術協力が不可欠であろう。

 廃炉作業で出る「核のごみ」をどうするのかも、避けては通れない。

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場については政府が昨年12月、自治体が応募する従来方式から、国が候補地を示す方式に切り替えることを決めた。ただし全く見通しは立っていない。

 むろん最終処分場は福島第1原発だけの問題ではない。青森県六ケ所村と全国の原発に、使用済み核燃料が置かれたままになっている。

 福島第1原発が抱えるのは、政府が直視したくない問題ばかりだろう。だが、そうした現実から目を背け、原発の再稼働ばかりを急ぐような姿勢は到底、許されるものではあるまい。

(2014年3月9日朝刊掲載)

年別アーカイブ