『スポットライト』 避難訓練 実体験語る
14年3月10日
東日本大震災を経験したしまね文化振興財団の舞台技術スタッフ
広瀬大さん(37)=益田市赤城町
島根県民会館(松江市)での避難訓練コンサートで、岩手県久慈市の文化会館に勤めていた時に遭った東日本大震災の経験を話した。「実際には訓練通りにはいかないが、さまざまな危険を想定しておくことには意味がある」と強調する。
被災時には、同僚がリハーサル中だった小学生約80人を避難誘導した。マニュアルでは揺れが収まるのを待つことになっていたが「経験のない揺れの中、現場ですぐに避難するべきだと判断した。避難ルートも想定と違った」と振り返る。
震災後に転職し、2012年から県芸術文化センター・グラントワ(益田市)に勤める。地震の少ない島根で認識のずれを感じることもあるという。
訓練では「ゴゴゴ」という効果音で地震発生を表したが「実際はあんな音はしない。メリメリと建物がきしむ音だけだった」。中国電力島根原子力発電所(松江市鹿島町)にも触れ「事故に備え、放射性物質による汚染を訓練想定に盛り込まなくていいのか」とも指摘する。
人前で話すのは苦手だが、転職時に岩手の知人から「経験を伝えて来て」と送り出された。「災害の少ない場所こそ訓練で備えないといけない。(経験の伝承は)自分の役目と思っている」(明知隼二)
(2014年3月9日朝刊掲載)