×

社説・コラム

社説 震災3年 再生可能エネ 東北をモデルに普及を

 ちょうど3年前、東日本大震災の衝撃を思い出したい。大量の放射性物質を放出した東京電力福島第1原発の事故を目の当たりにした私たちは、原発に依存する生活はやめようと誓ったはずではなかったか。

 確かに太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入は一定に進みつつある。ところが、ここにきて停滞感も拭えない。

 政府が先月まとめたエネルギー基本計画案は、福島県を再生可能エネに関わる産業の拠点にすることを盛り込んでいる。ただそれで十分だろうか。

 いま一度、原点に立ち返り、取り組みを強める必要がある。まずは東北地方全体に動きを広げ、全国のモデルにしたい。

 福島県は復興計画の基本理念として「原子力に依存しない社会づくり」を掲げる。廃炉が決まった福島第1原発だけではなく、県内の福島第2原発についても廃炉を求めている。

 だが東電は曖昧な態度を続ける。東電と政府は、県民の思いに一刻も早く応じるべきだ。

 脱原発にかじを切った福島県が目指すのが、再生可能エネの普及である。2020年に県内で必要な量の40%を、40年には100%を賄う推進計画を打ち出した。高い目標を掲げること自体が、後戻りはしないとの決意を示すのだろう。

 県内では官民の取り組みが具体化している。地元企業や市民が出資し、太陽光発電を手掛ける動きも生まれつつある。

 とりわけ有望なのが洋上風力発電だろう。企業や大学でつくる連合体が楢葉町の沖合に浮体式の風力発電所を設置し、昨年11月から出力2千キロワットで発電を始めた。増設も計画している。

 比較的、出力が大きい風力発電は再生可能エネの「本命」とされながら、日本の陸地には適地が少ないとされる。洋上で商業化に成功すれば、新たな地平が見えてこよう。

 政府も、産業技術総合研究所の「福島再生可能エネルギー研究所」を設け、地元の産業化の動きを後押しする。来月初めに開所するという。

 だが、福島だけの支援で済ませてはもったいない。東北地方ではほかにも、岩手県の三陸沖で洋上風力に加え、波力による発電に取り組む計画がある。宮城県でも、津波の被害に遭った東松島市で大規模太陽光発電所(メガソーラー)が昨年8月、運転を始めた。

 それなのに福島県以外では、安倍政権の熱意は薄れているように感じる。安倍晋三首相はきのうの会見で復興の加速を約束し、同時に原子力規制委員会が「安全性」を確認した原発については再稼働すると明言した。しかし、再生可能エネへの言及はなかった。

 東北地方はこれまで首都圏への電力供給基地の役割を担わされてきた。ここで再生可能エネの普及により自立できれば、地域再生のモデルとなろう。土木工事に偏重しがちな復興予算の使途について、政府はもっと地元の声を聞いてもらいたい。

 一方、東北電力は宮城県の女川原発2号機を再稼働する手続きを進めている。それは被災者が望むことなのだろうか。

 事故により、福島県の13万人余りはいまだに避難生活を余儀なくされている。その現実を踏まえれば、再生可能エネこそ最優先の選択肢であるはずだ。

(2014年3月11日朝刊掲載)

年別アーカイブ