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社説・コラム

天風録 「ともに生きる」

 若者は手をつなぎ、目を閉じる。寄り添って両手を合わせる老夫婦や涙をぬぐう女性もいる。きのうの午後2時46分。広島市の平和記念公園で、黙とうがささげられていた。忘れないと誓うように▲3年前は誰にとってもわがことだっただろう。大地をはう津波をテレビが映す。やがて原発の白い煙をとらえた映像が。広島で見ていた当方も、この下には人がいるはず、と恐怖した。今は自問する。3年たって想像の翼はうせてしまわなかったか▲「被災は現在進行形なんです」。夫と離れ、福島市から広島市に避難している佐々木紀子さんは言う。息子2人を放射線から守りたいと思った。原発の汚染水処理もままならない今はまだ、帰るかどうか決められない▲佐々木さんは「ひろしま避難者の会アスチカ」の副代表を務める。アスへ進むチカラ、だ。皆が希望を持って異郷に日々を過ごせるようにと、発信を続ける。福島を自分のこととして考える人が増えてほしい。国のありようを変えられると思うから▲3月11日を首相は国の「記念日」にする検討を始めた。それもあろう。だが、その1日だけに終わることなく、被災者に心を通わせれば、明日の力にきっとなる。

(2014年3月12日朝刊掲載)

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