×

社説・コラム

天風録 「ザ・ガードマン」

 当初の案は「東京用心棒」だったという。モデルになった警備保障会社から、待ったが掛かって「ザ・ガードマン」に落ち着いた。用心棒のままなら、隊長を演じた宇津井健さんの後年の印象も違ったかもしれない。先週、訃報を聞いた▲東京五輪の翌年から放送された人気ドラマ。市民の眠りを守る男たちは腕っ節が強く、銃は持たない。それでも刑事ものと見まがうほど難事件を毎回解決する。丸腰で大丈夫かといぶかる視聴者も安心させたのだろう▲同じころ、英国発の人形劇「サンダーバード」が席巻する。中立にして表には出ない国際救助隊だ。駆使するスーパーメカは兵器ではない。日本の憲法学者が至極まじめに分析したこともある▲2度目の五輪が6年後にやってくる。何だか、風向きが50年前と違う。閣議決定は先送りされそうだが、集団的自衛権の行使について憲法解釈の変更が取り沙汰される。「丸腰」中立など昔の絵空事さ、と言いたげに▲宇津井さんの隊長は説教魔でもあった。ドラマの結末は多少教訓めいて、こちらはお茶の間の受けが分かれたのかもしれない。永田町なら「そもそも憲法9条は」と、うるさがられる説教魔がいてもいいが。

(2014年3月18日朝刊掲載)

年別アーカイブ