×

社説・コラム

社説 G8のロシア除外 国際秩序をどう再構築

 冷戦終結後の国際秩序が重大な岐路を迎えている。

 日米欧など先進7カ国が、ウクライナ南部のクリミア編入を強行したロシアを当面、主要国(G8)会合から除外すると決めた。オバマ米大統領が呼び掛けオランダ・ハーグで開かれた緊急首脳会議で合意した。

 国際社会が自制を求めたにもかかわらず、ロシアはクリミア編入を推し進めてきた。強硬姿勢を転換しない限りG8へ参加させないとした7カ国の措置はやむを得ないだろう。

 崩れかけている国際秩序をどう再構築するのか。日本をはじめ各国は一致して取り組まなければならない。

 G8の前身であるG7は、石油危機後の不況やインフレへの対応を目的に1975年に初めて首脳会議を開いたことに端を発する。冷戦が終わった後、ロシアが加わり、98年からG8に移行した。

 経済だけではなく政治面でも世界の模範という気概は保ってきた。とりわけロシアの参加は冷戦後の国際協調の象徴でもあっただけに、情勢が不安定化する懸念は強い。

 むろん各国もG8からロシアを永久に追放したいとは考えていないはずである。各国首脳が採択した「ハーグ宣言」でロシアの行動を明白な国際法違反と強く非難しながら、外交解決の余地は残されているとしたことが示していよう。

 ロシアがG8に戻るには、何よりクリミア編入を撤回することが不可欠である。だがラブロフ外相は「われわれはG8にしがみついたりはしない」と語ったという。

 ロシア政府が強気の姿勢を崩さない背景には、国内世論があるのは確かだろう。クリミア編入を強行したプーチン大統領への支持が高まっている。

 さらに国際社会をめぐる情勢が21世紀に入り、大きく変わっていることも影響していよう。経済成長が著しい中国やインドなどを加えた20カ国・地域(G20)の枠組みが存在感を増している。

 ラブロフ外相は「全ての重要問題は今やG20で話し合われている」とも言い切った。ロシアがG8よりもG20の枠組みを重視しようとする表れだろう。

 もちろん国際社会のリーダーとしてG8の役割が消えることはあるまい。ハーグ宣言にも、ロシアがさらに状況を悪化させた場合には協調して経済制裁を実施することを盛り込んでいる。ロシアがクリミアに続いて、ロシア系住民が多いウクライナ南東部に侵攻する事態を防ぐ歯止めにはなろう。

 ただしG8の枠組みだけでは限界が見えつつあるのも否定できない。ウクライナの問題を解決しようとすれば、各国は国連の場なども通じて、より幅広い国際的な合意を形成していく必要があろう。

 日本が役割を果たさなければならない。ハーグでの緊急首脳会議に出席した安倍晋三首相はロシアのクリミア編入について「ウクライナだけではなく、アジアなど国際社会全体の問題だ」と述べた。

 中国と対立する、沖縄県の尖閣諸島の問題とも重なろう。日本政府は国際社会に対し、力による領土の変更は決して許されないということを訴え続けるべきである。

(2014年3月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ