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社説・コラム

社説 首脳会談とミサイル 日米韓の協調試される

 オランダ・ハーグで日米韓首脳会談が開かれたきのう未明、北朝鮮は日本海に向けて2発の弾道ミサイルを発射した。

 首脳会談のテーマはまさに北朝鮮の核・ミサイル開発への対応だった。あざ笑うかのようにタイミングを合わせた暴挙を断じて容認はできない。

 日韓関係は冷え込み、日米はきしんでいる。首脳会談は互いのぎこちなさも感じさせたが、ミサイル発射はその日米韓の連携を北朝鮮が嫌がっている証しとも受け取れる。今後も3カ国を中心に国際社会が協調して問題解決を図る必要性がクローズアップされたといえよう。

 今回、日本の方角に照準を向けた狙いは何だったのか。

 北朝鮮は2月下旬以降、短距離ミサイルやロケット弾の発射を繰り返していた。韓国での米韓共同軍事演習に反発しているためとみられてきた。

 しかし今回は射程1300キロと日本本土にも届く中距離弾道ミサイル「ノドン」とされる。

 ただ平壌の北方から発射し、日本列島には届かないよう飛距離を調整したとの見方もあるようだ。「最後の一線」は越えないにしても、日本を揺さぶることが日米韓の連携に水を差すと考えたのかもしれない。

 とすれば必要以上に慌てず、北朝鮮を包囲する方策を冷静に考えよう。まずは、弾道ミサイル技術を用いた発射を禁じた国連安全保障理事会の決議に違反するとして、国際社会が毅然(きぜん)と対応したい。

 ただ日本にとっては拉致問題がある。菅義偉官房長官はきのうの記者会見で「厳重に抗議した」と述べるとともに、今月末に予定される日朝局長級協議については「現時点で中止は考えていない」と述べた。

 拉致問題の解決は急を要するが、相手のペースでは足をすくわれかねない。局長級協議は中止や延期、あるいは途中退席も視野に入れ、先方の出方を慎重に見定める方法もあろう。

 核・ミサイルの完全放棄が求められていると、北朝鮮に分からせなければならない。

 日米韓首脳会談が「中国の果たす役割が重要」との認識で一致した意味もそこにある。クリミア問題のためロシアとの共同歩調が難しくなっただけになおさら、北朝鮮問題の解決には、後ろ盾である中国を巻き込むことが欠かせない。

 その意味でも、歴史認識をめぐるすれ違いがこの先も影を落とす事態は避けたいところだ。

 今回の会談で韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は従軍慰安婦の問題には触れなかった。安倍晋三首相も会談後、「未来志向の日韓関係に発展させる第一歩にしたい」と表明した。ただそれは、会談を仲介したオバマ米大統領の手前もあり、機微に触れる問題は互いに避けたということだろう。

 東アジアの平和と安定を考えれば、安倍首相は韓中米のトップと二国間や多国間の対話を重ねることで、相互の信頼を取り戻してもらいたい。北朝鮮にこれ以上暴発されても困るが、今回のように首脳が顔を合わせる機会をとらえ、関係改善に向けた一歩とするしかあるまい。

 日本国内での集団的自衛権の行使容認論議も決して無関係ではない。北朝鮮や中国の脅威論をあおるだけでは、東アジアの波風は強まるばかり。ここは対話外交の出番である。

(2014年3月27日朝刊掲載)

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