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社説・コラム

トップに聞く 島根原発とどう向き合いますか 松江市 松浦正敬市長

再稼働 市民目線で判断

1号機は廃炉が普通

 中国電力島根原子力発電所の立地する松江市。2号機再稼働へ向けた原子力規制委員会の安全審査が続き、結論が示されれば、市に重要な判断が迫られる。原発とどう向き合うのか。松浦正敬市長(66)に聞いた。(松島岳人)

 ―2号機の再稼働についての考えは。
 原発の依存率を下げていくことは必要。ただ、即ゼロは現実的に難しく、再稼働は必要だ。そのためには、安全性を最大限追求することが何よりも大事になる。2号機は、事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型だ。市民の不安に対して、国に納得できる説明をしてもらわないといけない。市民が不安を持ったままOKはできない。市民に寄り添って判断する。

 ―建設中の3号機については。
 実績ある原発を再稼働させるのは理解できるが、3号機は新設で事情が違う。国は原発依存率を下げるという中、新しい原発を稼働させてもいいのか。3号機の出力は137万3千キロワット。46万キロワットの1号機の3基分の能力がある。一方で、老朽化した原発を廃炉にして、より安全な新しい原発を運転させ、全体としては依存率を下げる考え方もある。国に考えを聞きたい。

 ―1号機は3月29日で運転開始から40年を迎えました。
 原子炉等規制法の基準から言って、原則廃炉だ。古い物はどこか危ないので、廃炉にするのは普通の考え方。国が認めれば、最長20年延長できるが、中電が延長したいのかどうかだ。原則を覆すなら、市民からいろいろな意見が出るだろう。

 ―市には原発事故時の避難計画があります。課題は。
 問題は、原発事故時に原発30キロ圏の住民がわれ先に避難し始めると、渋滞などが発生し、5キロ圏の人がその場に閉じ込められてしまう恐れがあることだ。解決には、10キロ圏や20キロ圏の住民は、屋内避難後、段階的に逃げるなど、国が避難の基準や手順をはっきりと定める必要がある。市のレベルでは対応できない。

 ―原発に対する考えは。
 原発があると、電源立地地域対策交付金がもらえるため、小さな自治体では、再稼働に積極的なところもあるようだ。松江市でも2014年度は約27億円が交付される。ただ、全体の予算規模に対しての比重は低く、原発に頼る自治体ではない。

 原発は合併前の旧鹿島町に建設されたので、旧松江市民には、迷惑施設とのイメージを持つ人もいる。松江の城下町文化は市民の誇り。原発事故で失われることは市民にとって耐え難い。市民の原発に対する姿勢はシビアだ。

島根原子力発電所
 2号機(出力82万キロワット)は2012年1月に定期検査入りして以降、運転を停止。ことし1月から再稼働へ向けた原子力規制委の安全審査が続く。1号機(同46万キロワット)は、原子炉機器の点検不備問題を受け10年3月に運転停止し、同11月に定期検査入り。3号機(同137万3千キロワット)は05年12月着工し、工事進捗(しんちょく)率は最新の公表数値(11年4月末時点)で93・6%。中国電力と島根県、松江市は、稼働、再稼働には県市の同意が不可欠との方針で一致している。

(2014年4月1日朝刊掲載)

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