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社説・コラム

社説 武器新三原則 なし崩し どう防ぐのか

 政府は「武器輸出三原則」を47年ぶりに全面的に見直し、閣議決定した。武器の原則禁輸から輸出拡大へ、かじを大きく切った格好である。

 名称も「防衛装備移転三原則」に変えた。国民の抵抗感を和らげようとする思惑があるに違いない。

 従来の三原則でも「例外」が積み重ねられてきた。しかし原則禁輸の政府方針が、野放図に輸出が増えることへの歯止めになっていたのも事実だろう。

 武器輸出がなし崩しになるのをどう防ぐのか。新たな三原則を決めた安倍政権には、その運用が厳しく問われよう。

 新原則の前文は、積極的平和主義を掲げている。だが武器輸出の拡大がなぜ平和につながるのかと、首をかしげる国民は多いだろう。

 前文の趣旨に沿うためには、海外に供する「武器」は人命救助や災害支援に役立つ装備と狭くとらえなければなるまい。その点で新原則の一つは、輸出を認めるのは平和貢献や日本の安全保障に資する場合に限り、厳格審査を行うとしている。

 例えば、対人地雷を探知したり、遺棄された化学兵器を処理したりする装備などは輸出しても理解が得られよう。これらは従来の原則でも、例外として海外に出してきた。

 ただし実戦部隊が使用する装備については慎重に判断する必要があろう。新原則を受け、政府は水陸両用の救難飛行艇US2をインドに売り込みたい考えのようだ。さらに大型輸送機C2は東南アジアなどに出すことを想定しているとみられる。

 こうした装備であれば、輸出を認めてもよいという意見も聞かれる。戦闘に直接関わらないのか、相手国がどう使おうとしているのか、よくよく見極めることが不可欠である。

 新原則は禁輸の対象として引き続き「紛争当事国」を盛り込んだものの、従来の原則にはあった「紛争当事国になる恐れのある国」との文言を外した。文面上は、これまで控えてきたイスラエルや中東諸国へも武器を売ることができると読める。だが日本が紛争に巻き込まれないためには、そうした道を開くことがあってはならない。

 また新原則は輸出先による目的外使用や第三国移転は基本的に日本の事前同意を義務づけるとしている。しかしいったん輸出をしてしまえば、その後のチェックはかなり難しくなろう。

 武器輸出の透明性をいかに保つかも重要な問題だ。従来は官房長官が例外とする理由などを談話として発表してきた。

 政府は新原則の運用方針で、武器輸出の許可状況について年次報告を作成し、公表するという。これまでと同じ水準の透明性を確保するには、少なくとも新たな装備を輸出する際には、その都度公にすべきだ。

 そもそも安倍晋三首相が常々語る積極的平和主義は、自衛隊の海外展開を念頭に世界の平和と安定に貢献するという考え方である。憲法解釈の変更で容認を目指す集団的自衛権の行使とも密接に関係している。

 新原則についても中国や韓国など周辺国から厳しい視線が注がれていることを忘れてはなるまい。日本が引き続き平和国家をうたうのであれば、武器輸出には努めて抑制的な姿勢が求められよう。

(2014年4月2日朝刊掲載)

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