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被爆地訪問オバマ氏意欲 「実現への鍵」識者に聞く

■記者 荒木紀貴、漆原毅、岡田浩平

 「核のない世界」を目指すオバマ米大統領。在任中の広島、長崎市訪問の意欲を表明したものの、初来日の今回は見送られる。オバマ氏の被爆地入りを後押しする鍵は―。有識者たちは外交力や受け入れ側の配慮が欠かせないと指摘する。

 米国内には、保守派を中心に「原爆投下は早く戦争を終わらせるために正しかった」との歴史観がある。1995年にワシントンのスミソニアン航空宇宙博物館で原爆展開催が企画された時も退役軍人が猛反発した。

 元国連アジア太平洋平和軍縮センター所長で京都外大の石栗勉教授は、そうした事情から「間接的に広島、長崎に触れたプラハ演説は勇気ある発言だった」とみる。その上で「被爆地を訪れても、静かに原爆資料館を見て大統領なりに考えてもらえばいいのではないか」と日本側の姿勢をポイントに挙げる。警備面などの課題をにらみ「電撃訪問は一つの手段」とも言う。

 日本外交の力量が問われる、とみるのは外交ジャーナリストの手嶋龍一氏。今回が短期滞在になったのも含め「大統領を被爆地に呼び込むのは外交の力。それがなかった」と指摘。「オバマ氏はプラハ演説が評価されれば2期8年務めるだろう。広島、長崎へ、と言い続け、日本も核軍縮について大きな提案を」と求める。外相経験の長い自民党の高村正彦氏(山口1区)も「根気よくお誘いを」と期待を寄せる。

 10日の定例会見。平野博文官房長官は「時間の許す滞在日数ならぜひ訪問してほしい」と述べたものの、岡田克也外相は実現の可能性や政府の努力について「個人的な思いはあるが、大統領自身が決めること」と多くを語らなかった。

 オバマ氏の被爆地訪問のインパクトは大きい。その影響力ゆえに実現のハードルも依然高い。

(2009年11月11日朝刊掲載)

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