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オバマ氏初来日 首脳会談 「核なき世界」挑戦 同盟深化で一致

■記者 荒木紀貴

 オバマ米大統領は13日、就任後初めて来日し、鳩山由紀夫首相と会談した。両首脳は、核兵器の全面的廃絶の達成に挑戦するとした「核兵器のない世界」に向けた共同声明を発表。オバマ氏は現職大統領として初の被爆地訪問について短期的な予定はないとしながら「訪問できれば名誉」と述べた。両首脳は「日米同盟の深化」でも一致した。

 会談では広島、長崎訪問について首相が「国民が期待している。機会があれば行ってほしい」と求めた。大統領は「将来訪問できれば名誉なこと」などと返答。共同記者会見では「すぐに行く予定はないが私にとって意味を持つ」と語った。

 大統領は会談で「核兵器のない世界というビジョンを共有している」と強調。ロシアと協力して核兵器削減の取り組みを進めるとする一方で「一夜にしてできるものではない。核抑止力は維持する」とも説明した。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題は、閣僚級作業グループで早期の結論を目指す点で一致。首相は会談で「できるだけ早く結論を出したい」と伝え、大統領は現計画の履行が望ましいとし「迅速に終わらせたい」と述べた。気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)の成功に向けた協力も確認した。

 首相はアフガニスタン復興で今年から5年間で50億ドル(約4500億円)規模の支援策を説明。大統領は謝意を示した。地球温暖化対策では2050年までに温室効果ガス排出量80%削減を目指す方針を確認した。

 首相は「建設的で未来志向の日米同盟を」と提案。大統領は「アジア太平洋地域の安定のための基軸だ」と応じた。首相は、提唱する東アジア共同体構想が日米基軸を前提とすると説明し「アジアで米国のプレゼンスが高まることを期待している」と表明した。

 首相は北朝鮮核問題で、ボズワース特別代表の北朝鮮訪問を支持する考えを伝え、核問題解決に向け連携を確認した。両首脳会談は9月に続き2回目。大統領は13日午後、専用機で羽田空港に到着した。

訪問実現へ努力  秋葉忠利広島市長の話

 核兵器を使った唯一の国である米国と、唯一の被爆国であるわが国が手を携え、核兵器廃絶に向けて世界をリードする決意を表明したことを歓迎したい。オバマ大統領の広島・長崎訪問ができるだけ早い時期に実現することを期待し、そのための環境を整えるよう努力したい。


日米首脳会談ポイント

 一、日米同盟の深化、発展で一致。来年の日米安全保障条約改定50年に向け、同盟再検討の
    協議を開始。
 一、日米同盟はアジア太平洋地域の安定のための基軸との認識で一致。
 一、米軍普天間飛行場の移設問題は、早期に結論を出す考えで合意。
 一、鳩山首相は、東アジア共同体構想は日米基軸が前提と説明し、アジアでの米国のプレゼンス
    の高まりに期待を表明。
 一、気候変動枠組み条約の第15回締約国会議(COP15)の成功に向けた協力で一致。
 一、首相は米国のボズワース北朝鮮担当特別代表の訪朝支持を表明。双方は、北朝鮮の核問
    題解決に向け連携を確認。
 一、首相は総額50億ドルを超えるアフガニスタンへの民生支援を表明。オバマ大統領が謝意。


<解説>まず「核の傘」問い直しを


■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴

 日米首脳が「核兵器のない世界」に向けた連携で合意した。発表された共同声明の内容に新味はさほどないものの、原爆投下から64年を経て、落とした国と被爆した国のトップが廃絶への努力を誓い合った意義は大きい。

 共同声明はその冒頭で「核兵器の全面的廃絶に挑戦」と宣言した。最大の核超大国と唯一の被爆国が首脳会談のテーマに核兵器を取り上げ、廃絶を目指すビジョンを共有したこと自体に重い意味がある。

 ただ共同声明は軍縮や不拡散の分野で、従来課題を総括した表現が目立ち、新たな取り組みは見当たらない。オバマ大統領は首脳会談後の記者会見で、4月のプラハ演説でも触れた「私たちが生きている間の廃絶は達成できないかもしれない」「核兵器が存在する限り核抑止力は維持する」と述べ、廃絶は長期的な課題だとの認識も示した。

 しかし核拡散の懸念がやまない世界にあって、北朝鮮の核開発への暴走を防ぐ意味からも、廃絶を確かな目標に据えた国際社会の迅速な行動こそが最重要で喫緊の課題であろう。米軍普天間飛行場移設問題の解決策を探る観点からも、日米安保体制で米国の核抑止力をどう位置付けるか、「核の傘」の存在意義を問い直すことを日米間の再協議の出発点とするべきだ。

 残念なことに今回、オバマ大統領自身が広島、長崎訪問について短期的な実現を困難視する発言をした。核兵器廃絶へ向け超大国と被爆国がパートナーシップを強めるのであれば、まず原爆被害の実態を直視することから始めてもらいたい。

(2009年11月14日朝刊掲載)

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