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「核の傘」堅持へ対米工作 麻生政権 小型核など提言

 日本政府が麻生政権時代に「核の傘」の堅持を狙い、米国の中期的な核戦略検討のために米議会が設置した「戦略態勢委員会」に行っていた対米工作の全容が23日、分かった。現在米国が持たない地中貫通型の小型核の保有が望ましいと指摘し、短距離核ミサイルの退役も事前に日本と協議するよう求めていた。複数の委員会関係者が明らかにした。

 中国や北朝鮮の核の脅威を危惧(きぐ)する日本は、米国の一方的な核削減が核の傘の弱体化につながると懸念。核軍縮に熱心なオバマ政権の登場を背景に、「傘」の信頼性確保を狙った外交工作を展開していたことになる。「核なき世界」に賛同する鳩山政権の基本姿勢と相いれぬ内容もあり、政府の対応が今後問われる。

 日本の工作を受け、2013年にも退役する核巡航ミサイル「トマホーク」の延命を求める意見が米保守派から台頭。日本の要求を背景に大幅な核削減に抵抗する主張もあり、米政府が近くまとめる新核戦略指針「核体制の見直し」にも影響する可能性がある。

 米側関係者によると、同委員会のペリー委員長(元国防長官)らは2月末、米政府への提言策定のため、在米日本大使館から意見聴取。大使館幹部らは日本の見解を記した3ページのメモを提出した上で、(1)低爆発力の貫通型核が核の傘の信頼性を高める(2)潜水艦発射の核トマホークの退役は事前に協議してほしい(3)核戦力や核作戦計画の詳細を知りたい―と発言した。

 米国は、広島型原爆の約20倍に相当する爆発力が高い地下攻撃用の貫通型核しか保有しておらず、「使える核」を求めたブッシュ前政権が低爆発力の小型貫通核の開発を目指したが、議会の反対で挫折している。

 3ページのメモは機密扱いだが、内容を知る核専門家ハンス・クリステンセン氏によると、日本側は多様な標的を攻撃できる「柔軟性」や、低爆発力の核で市民の巻き添えを最小限にとどめる「差別性」などを備えた核能力保持が望ましいと力説。「近代化された核弾頭」などで核の傘の「信頼性」を担保すべきだとも訴えた。

 昨秋にも、大使館幹部が委員会に「核を含む抑止という前提が崩れれば、日本は安全保障政策の根本を見直さざるを得ない」と伝達、核の傘弱体化に強い懸念を表明した。外務省は委員会とのやりとりを公表していない。

(共同通信配信、2009年11月24日朝刊掲載)

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