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原爆症訴訟 基金法案 今国会成立へ 被団協、首相に要望

■記者 岡田浩平

 鳩山由紀夫首相は26日、就任後初めて、日本被団協の坪井直代表委員や原爆症認定集団訴訟の原告たち被爆者と首相官邸で面会し、訴訟の敗訴者救済基金に国が補助する議員立法の今国会成立に期待感を示した。民主党の小沢一郎幹事長も国会内で原告に会い「今国会で成立するよう努力する」と明言。会期延長を前提に、衆院本会議で来週中に成立する方向で与野党が調整している。

 今後は、27日にも参院厚生労働委員会で委員長が提案し、30日の参院本会議で可決。与党は30日までの国会会期を12月上旬まで延長する方針で、来週中に衆院本会議で成立する公算が大きくなった。民主党が党首討論に応じないことなどに反発し、26日夕から審議拒否に入った自民党も「命にかかわる問題だから審議に加わり、賛成する」(参院幹部)としている。

 26日は被団協や原告側が約20分間、鳩山首相と面会。長妻昭厚生労働相が同席した。坪井代表委員が、訴訟の敗訴者救済基金に国が3億円を補助する議員立法の今国会成立を要望。被爆実態を反映した認定制度への改定や核兵器のない世界実現への主導的役割も求め、書面を手渡した。

 首相は「多年にわたりつらい思いを経験した皆さんが被爆を受けた人のために裁判を闘ってこられたのは大変尊い」とねぎらい、今国会での議員立法成立への期待感を表明。民主党マニフェスト(政権公約)で掲げた認定制度の見直しにも積極姿勢をみせた。

 坪井代表委員は面会後、新政権の被爆者対策について「じわじわ進んでいる感じだ。これからもしっかりお願いしたい」と話した。

 また、基金と同様に被団協と政府との訴訟解決に向けた確認書に盛り込まれた厚労相と原告側の定期協議について、長妻厚労相は年明け早々に初会合を開く意向を表明した。

冷たい制度への反省 山本英典・原爆症認定集団訴訟全国原告団長の話

 議員立法による救済はこれまでの冷たく、ハードルの高い認定制度を反省し、改める姿勢の表れだと期待している。今国会で法案が成立すれば大変うれしい。信頼関係を築くのはこれからだ。実のある協議を行い、被爆の実態に沿った制度にしてほしい。

原爆症敗訴者救済法案
 原爆症認定集団訴訟の全面解決に向け、議員立法で与野党が合意した法案。主に敗訴原告の金銭補償を想定する。今後、原告の支援事業を担う法人が基金を創設。この法律に基づき政府が一部資金を補助金(3億円を予定)で拠出する。8月6日、当時の麻生太郎首相と日本被団協が交わした確認書に、基金を設置し「原告にかかわる問題の解決のために活用する」と明記されたことが出発点となった。

(2009年11月27日朝刊掲載)

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