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「核時代」映す日用品 アトミカリア展 米国製など100点 広島

■記者 道面雅量

 核兵器や原子力のイメージを施した家庭用品やおもちゃ、菓子などの展示を通じ、主として米国の日常生活に核のイメージがどう浸透しているかを批判的に検証する展覧会「アトミカリア展」が、広島市中区大手町5丁目のスペース・ピカで開かれている。現代美術展や写真展も併せて開催。11月から市内で「ヒロシマ平和映画祭」を開いている市民有志が、関連イベントとして企画した。

 アトミカリアとは、原子力のイメージを施した物品の総称。約100点に上る展示は、原爆をめぐる映像表現の研究者で「ヒバクシャ・シネマ」の著者もあるオーストラリア・マードック大のミック・ブロデリック准教授のコレクションの一部だ。ほとんどが米国の製品で、インターネットなどを通じ10年余りかけて収集した。

 「アトミック・ファイヤー・ボール(原子火球)」は、激辛をうたう米国製のキャンディー。1954年以降、今も販売されているという。「アトミック」の名を冠した商品はほかにも医薬品、香水、消臭剤などが並び、「効果が強烈」といった意味で無批判に使われているのが分かる。原子核の模式図がデザインとしてあしらわれた家電や雑貨も多い。

 60年代のおもちゃには核戦争ゲームも。核保有国の首脳になりきって「50メガトン爆弾」「50万人」などと書かれたカードをやりとりする遊びで、衝撃を受ける。一方で80年代には、原子力発電所の事故から逃れるゲームも登場する。

 ブロデリック准教授は「原子力は強さや新しさの象徴だったのが、危険でいかがわしいものとして冷笑の対象になっていくなど、時代の流れも読み取れる。最近は、冷戦時代へのノスタルジーを反映するケースが多い」と解説する。

 怒りや戸惑いを覚える商品も少なくないが、目をそらしてはいけない日米間の核イメージのギャップや、消費社会の現実を見る思いがする。

 会場ではこのほか、中国出身で広島市在住の現代美術家范叔如(ファンシュウルウ)さんが、連作「ディズニーランド計画」を出展している。なにやら楽しげな凹凸のついた砂山は、移設・返還が日米間の大きな懸案となっている米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を、かの人気テーマパークにする案の模型という。白い絵の具で凹凸をつけた別の絵画群は、米海兵隊岩国基地(岩国市)や、日本、中国、台湾がそれぞれ領有権を主張している尖閣諸島を「ディズニーランド化」した図だ。

 いずれも軍隊やそれを背にした主権、いわば「暴力」があつれきを起こしている地だが、そこに巨大資本のテーマパークを進出させて「問題解決」するのも、それはそれで暴力的な印象を受ける。とぼけたような作風で、暴力とは何かを深く問い掛けてくる。

 スペース・ピカは映画館「サロンシネマ」があるビルの2階。原子力発電所建設への反対運動が続く祝島(山口県上関町)の風景写真展も開いている。10日まで午後3~8時に開場し、不定休。映画祭事務局Tel080(6306)8689。

(2009年12月1日朝刊掲載)

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