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被爆クスノキ 樹勢取り戻す 樹木医が治療指導 中区の12本に成果

■記者 和田木健史

 広島市中区白島北町の祇園新道沿いにある被爆クスノキが樹勢を取り戻している。一時は衰弱が心配されたが、国土交通省広島国道事務所(南区)が3年前から樹木医の指導で進めた治療の成果が表れた。関係者は「被爆の証言者。末永く茂ってほしい」と願う。

 樹齢が150年程度と推定される高さ10~15メートルの12本。爆心地の北約2.1キロに当たるALSOKホール東側に並ぶ。衰弱は2006年、県樹木医会前会長の溝口幸平太さん(72)たちに依頼した調査で判明。当時、5段階の健全度評価で2番目に悪い「著しく不良」が2本、「不良」が4本あり、「良」はなかった。

 同事務所はその年から年1回の治療を開始。枝や幹の腐った部分を切り落とし、細菌や水が樹木内に入り込まないよう薬剤を塗ったり、肥料をやったりした。

 その結果、葉が増え、枝ぶりも広がる樹勢の回復が認められた。今は6本が「良」、「不良」以下はなくなった。同事務所は11月27日まで3日間行った今年の治療をひと区切りとし、来年以降は経過観察する。

 長年見てきた近くの山田和邦さん(79)は「原爆投下直後、爆心地に向いた南側の樹皮は熱で傷んでいたが、北側の残った部分には生命力を感じた。元気になって良かった」。溝口さんは「原爆を語り継ぐため、今後も見守りたい」と話した。

(2009年12月1日朝刊掲載)

 

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