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START1失効後の課題 ロバート・グレイ元軍縮大使に聞く

■記者 金崎由美

 米国と旧ソ連が1991年に調印した第1次戦略兵器削減条約(START1)が失効した。米国の核軍縮政策に詳しいロバート・グレイ元軍縮大使(73)が広島を訪れたのを機に、今後の課題や展開について聞いた。

―5日の期限切れまでに後継条約で最終合意できなかった理由をどうみますか。
 米国とロシアが真剣に交渉したのは最近の5カ月間。米大統領の交代もあり、最近まで「交渉のための交渉」に終始した。合意に至る環境ではなかった。

 ブッシュ政権時に米ロ関係が冷えた事情も大きい。北大西洋条約機構(NATO)を東方に拡大し、ロシアを警戒させた。昨年は、グルジア紛争を機にNATOとロシアの溝が深まった。

 見方を変えれば、これだけ短期間でよくやったとも言える。

―核軍縮の履行状況をチェックし合う体制に影響は出ませんか。
 確かに、検証体制をめぐる意見の対立が残っている。期限切れを受け、ロシアのミサイル工場に常駐していた米国の査察官が撤収したという。

 しかし、後継条約の重要性についての認識は米ロが共有している。遅れはあっても調印は確実だ。後継条約が発効するまでは基本的に現状の体制も維持される。時間的な空白について私はそれほど懸念していない。

―双方の核弾頭数を1500~1675とする中間合意をどうみますか。
 削減幅は緩やかであり、さらに減らす交渉を望みたい。

―後継条約の発効に必要な米上院の批准の行方は。
 100人の議員のうち批准に必要な3分の2は確保できるとみている。ただし、内容を理解するための議論は必要だし、上院は同時にいくつもの議題を抱えている。数カ月はかかるだろう。

 そして次のハードルとして、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准が控えている。後継条約よりも格段に困難だろう。来年中の実現を目指し、議会の説得に努めたい。

ロバート・グレイ氏
 1998~2001年、米軍縮大使を務めた。NATO最高司令官顧問、国務省局長なども歴任した。

(2009年12月7日朝刊掲載)

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