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中沢啓治さん作品の原画・資料 原爆資料館に寄贈

■記者 東海右佐衛門直柄

 被爆後の広島で力強く生きる少年を描いた漫画「はだしのゲン」の作者中沢啓治さん(70)が、所有する全原画や関連資料を原爆資料館(広島市中区)に寄贈することが8日、分かった。1963年のデビュー以来、描いてきた漫画59作品(うち未公開1作品)の約6割は原爆がテーマ。資料館は企画展などで活用する。

 「はだしのゲン」「黒い雨にうたれて」「お好み八ちゃん」など58作品の原画▽大人のゲンを描く構想だった未完の「はだしのゲン第2部東京編」の未公開原画▽ストーリーを記したノート▽週刊少年ジャンプといった掲載誌▽執筆用の原爆関連資料―などを寄贈する。

 デビュー作「スパーク1」の原画だけは中沢さんの手元に残っておらず、所在も分からないという。

 「ゲン」の原画計2735枚については1994年5月、資料館東館の開館に合わせて中沢さんが市に寄託。企画展も開かれた。今回、他の作品の原画とともに所有権を市に移し、著作権は中沢さんが引き続き保有する。来年1月にも書面を交わす。ゲンの原画を除く寄贈資料は段ボール箱約30箱分。既に埼玉県所沢市の中沢さん宅から発送された。

 中沢さんは9月、白内障の悪化で繊細な線が描けなくなったとして漫画家引退を表明。「原爆のむごさやゲンが願い続けた平和の尊さを伝え続けてほしい」と寄贈を決めた。資料館の前田耕一郎館長は「ゲンは世界的にも有名で原画は第1級の資料。作品群として残す」としている。

はだしのゲン
 1973年に週刊少年ジャンプで連載スタート。被爆の逆境をはねのけ前向きに生きるゲンの姿が人気を呼び、単行本販売部数は計約1千万部の大ヒット。世界17カ国語に翻訳されている。中沢さんは「第2部」を構想し、ゲンがフランスへ絵画修業に行く筋書きを予定していたが、9月の引退表明で執筆を断念した。

(2009年12月9日朝刊掲載)

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