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連載・特集

核兵器はなくせる 第4章 NATO・冷戦の遺物 <2> 格納庫

■記者 金崎由美

地下に核爆弾貯蔵か  地元市長「容認できぬ」

 鉄条網の向こうに、かまぼこ形の格納庫が点在していた。北イタリアのロンバルディア平原に広がるゲディ・トーレ空軍基地。このイタリア空軍の拠点に、米国の核爆弾B61が配備されているという。

 敷地内にトーネード戦闘機の格納庫は22ある。うち半数にB61を保管。一つの格納庫には地下に最大4個が備蓄できるとされる。

 鉄条網に近い格納庫は、フェンス越しに石を投げたら届きそうな距離だ。「兵士が24時間監視していると基地関係者から聞いたことがある。ただの格納庫じゃないと住民は気付いている」。地元の人がそう教えてくれた。

 一方で最近、欧州での戦術核の分散管理は安全上の課題があると指摘する米軍の内部文書の存在が明らかになった。ゲディ・トーレ基地の推定20~40個のB61はすでに撤去されたとの説もある。

 2期目の選挙を控えた地元ゲディ市のアナ・ガルネリ市長(53)が取材に応じてくれた。「基地に米軍関係者がまだいるし、核は撤去されていないんじゃないかしら。ただ、政府に説明を求めても明確な回答はない」

 北大西洋条約機構(NATO)は、域内での米国の戦術核の存在は認める。だが、場所や数は一切明らかにしない「あいまい政策」を取る。

 ゲディから車で約30分の町ブレーシャ。ここを拠点に活動する基地監視団体を訪ねると、カルロ・ディ・ジョバンバティスタさん(51)が断言した。「核兵器という負担を引き受けることがNATOでの発言力を強める。イタリアにはそんな考え方が根強い。米国が撤去を打診しても、政府は反対するさ」

 非核兵器保有国の事実上の核兵器保有。いびつさを見直そうとの地道な努力も続く。

 遠くアルプスの山並みを望むイタリア北東部の小都市アビアノには、やはりB61を配備しているとされる米空軍基地がある。ステファノ・デル・コント市長(48)は「基地抜きに町は成り立たない」と現状を話す。町の人口9千人とほぼ同数の米国人がいる。基地との共存は大前提だ。しかし、「核兵器は別だ」。

 アビアノ市はゲディ市とともに平和市長会議(会長・秋葉忠利広島市長)のメンバー。両市長は市民団体と協力し、イタリア憲法に非核条項を加える運動も続けてきた。

 「核兵器の問題がイタリアだけで解決できるとは思っていない。しかし、大量破壊兵器との共存は、倫理的に容認できない」とデル・コント市長は言い切る。住民代表として声を上げることが、「山」を動かす一歩と信じる。

(2009年6月14日朝刊掲載)

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