『核兵器はなくせる』 新潟からの報告 <上> 高まる「ゼロ」への機運
09年9月4日
■記者 金崎由美
8月28日までの3日間、新潟市であった国連軍縮会議は、来年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議を見据えた活発な討論を繰り広げた。同時に、山積する課題を再確認する場ともなった。参加者の発言を通して再検討会議を展望する。
日本海に流れ込む信濃川の河口近く。国際会議場の朱鷺(とき)メッセに、NPT再検討会議の議長を務めるフィリピン外交官のリブラン・カバクチュラン氏をはじめ、21カ国の政府関係者や専門家約90人が集った。
初日の討議で、米国のスーザン・バーク大統領特別代表(不拡散担当)が明言した。「オバマ大統領はプラハで『核兵器のない世界を目指す』と演説した。われわれはNPT体制の強化のため、国際社会と一緒に努力する用意がある」
前回(2005年)のNPT再検討会議が決裂したのは、当時のブッシュ米政権の単独主義的な態度が要因とされた。それだけに、核超大国の「チェンジ」を象徴する今回のバーク氏の発言を、周囲は来春に向けた明るい材料と受け止めた。
しかし、議論が各論に及ぶと途端に、参加者の顔つきが厳しくなる。核兵器ゼロへの道に立ちはだかる壁を思い知らされるからだ。
例えば、包括的核実験禁止条約(CTBT)の米上院による批准。バーク氏自身も「NPT再検討会議の前は難しい」とこぼした。
核不拡散・核軍縮に関する国際委員会(ICNND)の共同議長を務めるギャレス・エバンズ元オーストラリア外相は「核弾頭数を大胆に減らすには『核兵器に対する抑止だけが核保有の唯一の目的』との政策を伴うことが肝要だ」と強調した。核兵器の先制不使用宣言を意識しての発言だ。しかし同時に「核兵器の役割を減らしていく政策で国際的に合意するのは非常に難しい」と、その実現には弱気ものぞく。
「核の傘から出る勇気は廃絶への貢献になる」と述べたのは国連事務総長軍縮諮問委員会のケイト・デュース委員(ニュージーランド)。核の傘の役割を重視する米国の同盟国、すなわち日本や韓国を意識した指摘だった。
その被爆国の姿勢はどう「チェンジ」するのか。新潟会議の参加者の視線は、この国に間もなく誕生する新政権にも向く。
(2009年9月3日朝刊掲載)
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日本海に流れ込む信濃川の河口近く。国際会議場の朱鷺(とき)メッセに、NPT再検討会議の議長を務めるフィリピン外交官のリブラン・カバクチュラン氏をはじめ、21カ国の政府関係者や専門家約90人が集った。
初日の討議で、米国のスーザン・バーク大統領特別代表(不拡散担当)が明言した。「オバマ大統領はプラハで『核兵器のない世界を目指す』と演説した。われわれはNPT体制の強化のため、国際社会と一緒に努力する用意がある」
前回(2005年)のNPT再検討会議が決裂したのは、当時のブッシュ米政権の単独主義的な態度が要因とされた。それだけに、核超大国の「チェンジ」を象徴する今回のバーク氏の発言を、周囲は来春に向けた明るい材料と受け止めた。
しかし、議論が各論に及ぶと途端に、参加者の顔つきが厳しくなる。核兵器ゼロへの道に立ちはだかる壁を思い知らされるからだ。
例えば、包括的核実験禁止条約(CTBT)の米上院による批准。バーク氏自身も「NPT再検討会議の前は難しい」とこぼした。
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「核の傘から出る勇気は廃絶への貢献になる」と述べたのは国連事務総長軍縮諮問委員会のケイト・デュース委員(ニュージーランド)。核の傘の役割を重視する米国の同盟国、すなわち日本や韓国を意識した指摘だった。
その被爆国の姿勢はどう「チェンジ」するのか。新潟会議の参加者の視線は、この国に間もなく誕生する新政権にも向く。
(2009年9月3日朝刊掲載)
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