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『核兵器はなくせる』 新潟からの報告 <中> 再検討の鍵「バランス」

■記者 金崎由美

 「軍縮と不拡散、原子力の平和利用という3本柱のバランスある前進が鍵だ」。国連軍縮新潟会議の2日目、核拡散防止条約(NPT)体制の強化策をめぐり、来春のNPT再検討会議で議長を務めるフィリピン外交官のリブラン・カバクチュラン氏が演説した。

 「バランス」という言葉の背景に、「NPTは不平等だ」との加盟国の不満がある。

 NPTは米国やロシアなど5カ国だけに核兵器保有を認め、同時に軍縮義務を課す。それ以外の国は平和利用は認められるものの、国際原子力機関(IAEA)の査察を受けなければならない。

 一方、北朝鮮はNPT脱退を宣言して核実験し、イランはウラン濃縮を進めるなど不穏な動きが相次ぐ。だからといって不拡散の強化ばかりを重視すれば、保有国の軍縮の不十分さは不問となり、さらに平和利用の権利が束縛されかねない―。多くの非保有国が不満を募らせる。

 バランスを取るのは容易ではない。新潟会議で遠藤哲也・元原子力委員会委員長代理は「平和利用の拡大は核拡散のリスクを伴う。(原発燃料となる)ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理は核兵器開発と紙一重だ」と指摘した。

 しかもインド、パキスタン、イスラエルはNPTに加盟していない。エジプト外務省のハレッド・アブレルラーマン・シャマア軍縮担当部長は、イスラエルの事実上の核保有を念頭に「現状を放置すれば核拡散を合法化したことになる。すべての国に平等に不拡散体制を強化すべきだ」と批判の声を上げた。

 NPTの無期限延長を決めた1995年の再検討会議は、アラブ諸国の不満に対応し、中東への非大量破壊兵器地帯設置を盛り込んだ「中東決議」も採択した。

 それから14年、イスラエルの核保有に対する国際社会の対応は今なお手詰まり状況にある。シャマア氏は「中東決議を実行するための合意ができるのか。それが来春のNPT再検討会議の試金石だ」と言い切った。

(2009年9月4日朝刊掲載)

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