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『核兵器はなくせる』 新潟からの報告 <下> 政治の力で合意目指せ

■記者 金崎由美

 第21回国連軍縮新潟会議が閉幕した8月28日、主催した国連アジア太平洋平和軍縮センターの木村泰次郎所長は「来年5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功を目指し、参加者の一致した意思を感じた」と3日間の討議を振り返った。

 今年4月のオバマ米大統領のプラハ演説以来、核軍縮への前向きムードが広がる。来年春に向け国際社会に残された課題は、さまざまな懸案を一つ一つ解決し、核軍縮、廃絶への具体的な道筋をどう実行していくかだ。

 新潟会議でも包括的核実験禁止条約(CTBT)の見通しを探るセッションで、CTBT機関準備委員会のハレッド・アブレルハミッド事務局長特別補佐官が指摘した。「CTBT発効に向けた前進が来春の再検討会議には決定的に重要だ」。居合わせた米国、中国の参加者に、それぞれの批准を迫る発言でもあった。

 国家間の利害対立を乗り越え、来春の再検討会議でどんな合意が達成できるのか。同会議で議長を務めるフィリピン外交官のリブラン・カバクチュラン氏は新潟で「加盟国の政治的な意志と柔軟性、前向きな妥協が不可欠だ」とリーダーシップの必要性を語った。「市民社会からの働きかけが重要」とも付け加えた。

 同調する声が出た。NPT再検討会議の議題で合意するなど画期的な成果を挙げた今年5月の再検討会議準備委員会。その議長を務めたジンバブエのボニフェース・シディアスシク国連大使だ。「市民にできることがある。自分の選挙区の立候補者に核軍縮、不拡散への努力を求めること。われわれの訴えに応える政治家に1票を投じることだ」

 国連大学(東京)のベセリン・ポポフスキー学術審議官は「オバマ大統領の広島訪問を希望する。『プラハ演説』に最も説得力を与える場所だから」と強調した。

 政治家にリーダーシップを迫るのは有権者である市民。その声を束ね、大きなうねりにする力を持つのはヒロシマ、ナガサキだ。来春に向け、被爆地が求心力を発揮する機会が訪れている。

(2009年9月5日朝刊掲載)

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