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『核兵器はなくせる』 新政権の安保と外交を聞く <3> 社民党政審会長 阿部知子氏

■記者 林淳一郎

  ―民主党や国民新党との連立協議で、安保・外交政策についてどう主張しましたか。
 キーワードは「パラダイムシフト」。考え方を大胆に変えることだ。核兵器に頼らない安全保障をどう築いていくかが問われている。原爆被害を経験した日本は今こそ行動を起こさなければならない。3党の共通政策協議の柱に核兵器廃絶を位置付けた。

先制禁止訴え

  ―具体的には今後、何に取り組みますか。
 三つの条約に絡んで日本が主体的な役割を果たす。包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効と、兵器用核分裂物質生産禁止(カットオフ)条約の早期実現、来年春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議でのリーダーシップだ。

 社民党はさらに、核兵器の先制使用の禁止を核保有国の米国やロシア、中国に求め、北東アジア非核地帯の創設に向けてもアクティブに動いていく。

  ―非核三原則の堅持や法制化も焦点になりますか。
 三原則を「守る」だけではだめ。日本は原子力平和利用の面で優等生だが、大量のプルトニウムを持ち、周辺国から核武装するかもしれないと疑われている国でもある。疑念をぬぐい去る行動をとらないといけない。

 それには政治家の失言をなくすこと。外交において失点になる。「核の傘」の提供を受ける米国との協議では、十分な意思疎通を図ることが先決だ。米国も本心では日本を疑っている。外務省任せではなく、閣僚自らが被爆国の考えを愚直に伝える必要がある。

  ―どんなメッセージを発信し、どう行動すべきですか。
 少しずつでも核抑止力に頼らないようにする。その一つとして、なぜ日本が非核を訴えるのかを知ってもらうことが大事。米国などの政治家を被爆地広島、長崎に招き、原爆がもたらす現実を共有する。一方、国内でも核兵器廃絶に向けた国民の合意形成を図らなければならない。

中国との協働

 ―北朝鮮を含むアジア外交の展望は。
 6カ国協議という対話のパイプは今、か細くなっている。北朝鮮への対応の鍵は人道支援であり、在朝被爆者や食糧難、子どもへの医療支援は突破口になると思う。中国との協働も必要だろう。人と物の行き来は情報をもたらし、拉致や核問題解決の出発点になる。

 すべては外交。実現へのステップを踏むために、日本政府が具体的なプランを立てるときだ。

 あべ・ともこ
 1948年東京都生まれ。東京大医学部卒。小児科医。2000年の衆院選以来、当選4回。03年から社民党政審会長。国際的な議員組織、核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)のメンバー。

(2009年9月10日朝刊掲載)

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