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「明日の神話」渋谷に 岡本太郎財団 寄贈先決める 広島選ばれず

■記者 道面雅量

 岡本太郎の原爆壁画「明日の神話」について、所有者の岡本太郎記念現代芸術振興財団(東京都港区、与謝野馨理事長)は18日、理事・評議員会を開き、東京都渋谷区を寄贈先に決めた。ともに誘致に名乗りを上げていた広島市、大阪府吹田市は選ばれなかった。

 記者会見した同財団常務理事の平野暁臣・岡本太郎記念館館長は「設置環境、意義、受け入れ態勢などで総合的に判断した。渋谷に置かれるが日本の財産であり、多くの人を元気にしてくれるだろう」と語った。

 渋谷区は、JR渋谷駅から車道を挟んだ向かいのビル「渋谷マークシティ」に架かる連絡通路に展示する案を財団に出した。1日約30万人が渡る通路で多くの人の目に触れる点、港区南青山にある岡本太郎記念館に近く、連携して活用できる点、既に収容施設があって資金、工期面の不安も少ない点などが評価された。寄贈や設置の日程は決まっていない。

 広島市は、中区の市民球場に隣接するハノーバー庭園に展示施設を2011年までに建てる案を提出。被爆地から世界にメッセージを発信できる物語性を強調し、署名など市民の誘致運動も盛り上がった。吹田市も、岡本の代表作「太陽の塔」が市内の万博記念公園にある縁をアピールしたが、ともに及ばなかった。

 壁画は縦5.5メートル、横30メートルの超大作。核兵器に打ち負かされない人間の尊厳を描いたとされる。1960年代末にメキシコで制作され、一時行方不明になったが2003年に見つかり、日本に移送、修復。財団が寄贈先を募り、3自治体が受け入れを表明していた。

思い通じず残念

 秋葉忠利広島市長の話 市民の思いが通じず、残念に思っている。壁画が渋谷区で大切にされ、岡本太郎氏が原爆のさく裂した瞬間とその惨劇から立ち上がる人間を描くことで作品に込めたメッセージが、多くの人々に伝わるよう願っている。

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