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連載・特集

核兵器はなくせる 新政権の安保と外交を聞く <6> ピースボランティア(被爆者) 岡田恵美子氏

■記者 吉原圭介

  ―核兵器廃絶に向け新政権に何を期待しますか。
 党派を超えて本気で核兵器廃絶に取り組んでほしい。米国のオバマ大統領のプラハ演説は希望と感動を与えてくれた。しかし、彼一人で核兵器のない世界を実現できるわけではない。地球に住む一人一人のチェンジが必要となる。

 そのためには核兵器の恐ろしさを、頭ではなく心で理解してもらうことが大事。被爆国日本政府は、それを推進する努力をしてほしい。すべての国会議員たちが広島を訪れ、原爆資料館をじっくり見学し、被爆者の声に耳を傾けてほしい。

 国外に向けては、原爆被害を伝える取り組みが欠かせない。今年5月に米ニューヨークの高校で被爆証言をしたとき、9割は「聞いたことがなかった」との反応だった。「私たちの国が原爆を落としたんですか」と言った生徒もいた。もっと伝える努力が要る。

同様の症状も

  ―原爆被害の全体像の解明は不十分では。
 そう思う。人体や遺伝的影響は科学的に十分解明できていない。被爆者の立場からすると「怖いから知りたくない」「人に知られたくない」との思いは確かにある。しかし、それを乗り越えて解明してもらうことが、次のヒバクシャをつくらないことにつながる。

 米シカゴでの原爆展で被爆証言をした際には、海兵隊に7年間いて湾岸戦争にも従軍した男性が「自分の体調不良と同じ症状が、広島・長崎であったことを知った」と言っていた。劣化ウラン弾の影響かもしれない。放射線の恐ろしさを正しく広く伝える責任があると感じた。自分がヒバクシャだと知らない人が、世界には相当数いるのではないか。

米国と対等に

  ―「核の傘」についてはどう考えますか。
 アジアでの友好関係を確立することが大事だと思う。北朝鮮については関係国同士が信頼関係を築くことができれば、「傘」はいらなくなる。6カ国協議を広島で開催してはどうだろう。

 また、米国とは対等な関係で外交を展開してほしい。前提となるのは、日本が確固たる外交政策をつくることだと思う。それを持って米国と議論をするべきだ。

 おかだ・えみこ
 広島市東区在住。8歳のとき爆心地から2.8キロの自宅の庭先で被爆した。1999年から原爆資料館のヒロシマピースボランティア。今年5月、核拡散防止条約(NPT)再検討会議準備委員会に合わせて訪米し、体験を証言した。

(2009年9月15日朝刊掲載)

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