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連載・特集

核兵器はなくせる 第7章 再出発のとき <3> 「官」との距離

■記者 林淳一郎、金崎由美

「核の傘依存」と一線 廃絶論 政治がリード

 いきなり「政」が「官」を仕切った。

 鳩山由紀夫内閣の発足間もない9月17日未明。皇居での認証式や首相官邸での就任記者会見を終えた岡田克也外相は東京・霞が関の外務省に入ると、えんび服姿のまま官僚に指示を出した。米艦船による核兵器持ち込みをはじめとする日米間の「密約」疑惑の徹底解明だ。

 「政治家が自らイニシアチブを発揮しなければならない」。直後に省内でも記者会見した岡田外相は約60人の報道陣を見据え、言葉に力を込めた。見守る外務省職員の表情は心なしか硬い。

 外相は民主党核軍縮議員連盟の会長も務め、鳩山政権がうたう「核兵器廃絶の先頭に立つ」熱意は人一倍強いとされる。

情報発信も主導

 外務省に先立つ首相官邸での会見でも岡田外相は「持論」と前置きしながら、核兵器をめぐって踏み込む発言をした。「核を先制使用すると明言するような国に核軍縮を言う資格があるのか」。米国の「核の傘」については従来の日本政府見解である「米国の核抑止力に依存する」を念頭に、「外務省の中にいろいろ意見がある。議論したい」。変革への意欲をうかがわせた。

 それから半月余り。岡田外相は省内での記者会見を雑誌やネット記者らにも開放するなど公開性を高めるとともに、「官」による会見は減らし、本人や副大臣ら「政」が主体的に情報発信していく体制へと変えた。外務官僚からは「政治主導をつくづく実感する」との声が漏れる。

 元外交官で外務省内部の事情に詳しい日本赤十字看護大の小池政行教授(国際関係論)は「これまでの官僚政治も(政権与党の)政治家の思惑と少なからず一致した上で成り立っていた。それを考えれば、逆に政治家がしっかりと考えを示せば、官はついてくる」とみる。

 一方の自民党。林芳正元防衛相が参議院議員会館の事務所でまゆをひそめた。「政治主導ばかり主張して外務省と溝ができれば、まずいことになりはしないか。(大臣らの)演説や発言のチェックは十分できるのか」。鳩山首相が就任前に米国主導のグローバリズムを批判した論文が米紙に引用され物議を醸した経緯が念頭にある。

日本側を尊重?

 米シンクタンク「外交問題評議会」のシーラ・スミス上席研究員は、岡田外相が核兵器の先制使用に疑義を示したことを「大きな変化だ」と重大視する。

 そのうえで、被爆国の出方次第では今後の日米交渉の焦点となりうる「核の傘」について「在日米軍再編問題と比べればさほど重要ではない」と断言する。それは、通常兵器だけで米国は日本に抑止力を提供できるとの現状分析であり、仮に日本政府が「核の傘」見直しの意向を示せば、米国はその方針を尊重するとの見立てでもある。

(2009年10月6日朝刊掲載)

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